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【グルメ散歩⑤】
なぜ前橋は「パンの街」になった?
いま行くべき“推し”の20店

2025.10.26

【グルメ散歩⑤】
なぜ前橋は「パンの街」になった?
いま行くべき“推し”の20店

 パンの街へ出かけるなら、いまは前橋です。小麦の香りが街の朝を動かします。老舗の守る味があり、新しい挑戦もある。この20店をめぐれば、この街のパンの実力が見えてきます。今日の気分に寄り添うパンがきっと見つかります。
(文/阿部奈穂子)

前橋のパンを支える老舗

▲風格のあるスズメ堂の店舗

 「スズメ堂」は来年で創業100年です。焼きそばパンにコロッケパン、マヨたまサンド。今も100円台を守り、「日常を焼く店」であり続けています。

  給食パンも焼き続け、前橋の記憶を支えてきました。

▲なつかしさを感じる調理パンは100円台

 終戦の年に生まれた「アジア製パン所」は、控えめなたたずまいです。看板のたまごパン、メロンパンに味噌パン。華やかではなく、頼もしさがある。前橋の台所をずっと支えてきた味です。

▲ホイップクリームをはさんだ、たまごパン。定番の人気

前橋のパンを変えた革新

 2004(平成16)年、前橋に「グランボワ」が登場しました。本格的なフランス・ドイツパンの火をつけた店です。

 「マカダミアリュスティック」は、手のひらいっぱいの生地にナッツがたっぷり入り、人気を集めています。

▲「グランボワ」のマカダミアリュスティック。割るたび、笑顔がこぼれる

 グランボワの技は敷島公園内の姉妹店「アボワ」へ。薪窯で焼いた野趣あふれるパンを味わえます。

 さらに北代田町の「ぱんや やまの如く」へもつながりました。グランボワで経験を積んだご夫婦が開いた店で、国産小麦や赤城南麓で平飼いされる「つのだ養鶏」の卵など、素材にこだわったパンが並びます。

 

▲薪窯から煙が上がり、「アボワ」が開店

▲ハード系に自信。「やまの如く」のパンたち

わざわざ前橋で買いたい味

 このパンのために前橋へ来る人がいます。“特別”が、ここにはあります。

 1999(平成11)年開店の「政次郎のパン」は、“政”の焼き印入り食パンが看板。群馬県産小麦「ゆめのかおり」を使い、「1日経ってもしっとり感がある」と根強いファンに支持されています。

▲「政次郎のパン」。店主の大島政次郎さんの名前から命名

 白井屋ホテルに併設する「白井屋ザ・ベーカリー」は北海道産の希少な⼩⻨粉「ハルユタカ」の⼀等粉だけを使用する、ふんわり柔らかな「白パン」が人気。

 石井県道沿いの「キツネベーカリー」は、キューブ型クリームパンやフォカッチャなど約60種。その名のとおり、こんがりキツネ色の美味しさが並んでいます。

▲「白井屋ザ・ベーカリー」の白パン。アレンジいっぱい ©Shinya Kigue

▲「キツネベーカリー」のパン3種

朝を焼く職人たち

 まだ暗い時間から、街の一日を動かしてくれます。焼きたての香りが、今日をスタートさせます。

 7時開店の「はるぱん」は、東日本製菓技術専門学校で出会った若い女性2人が2022(令和4)年9月にオープンした店。小ぶりながら中身ぎっしりのパンが並び、「枝豆とチーズ」「フレンチトースト」「ベーコンポテト」などが人気。ドリンクを注文してイートインもでき、朝の時間を楽しむお客さんも多いです。

▲広瀬川の風を感じる「はるぱん」

 同じく7時開店の「パンコロリン」は、毎日50種類以上のパンが並び、通勤・通学客も立ち寄る身近な存在です。

 7時30分開店の「くるみの森」では、店名の由来となったフランスパン「パン・オ・ノア」が名物。「ころとん」メンチカツバーガーや手作りルーのカレーパンなど、人気商品が揃います。

▲朝一番でもこんなに並ぶ。「ぱんころりん」の焼きたてパン

▲愛くるしい「くるみの森」のパンたち

噛むほどにハマる手しごと

 噛むと小麦の香りが広がる。硬さじゃない、手間の証です。

 「I WORKS BAKERY 765+C..」は永明公民館近く。コンテナハウスの小さな空間に、パリを感じさせるパンが並びます。噛み応えのあるバゲットサンドや、大ぶりクロワッサンが評判です。

 「パン ジョグリ」はフランス産小麦粉を混ぜたバゲットが看板で、外はカリッ、中はもっちり。

▲噛み応えと香りが濃い「I WORKS BAKERY 765+C..」のバゲットサンド

▲ハード系が勢ぞろい「パン ジョグリ」

 「ぱん卓」では、プレッツェルがひそかな名物。太い部分はむっちり、細い部分はポリポリと異なる食感です。

 共愛学園近くに今年7月オープンの「Cocon」はバゲットサンド専門店。天然酵母を使ったふんわり食感のバゲットに、地元の無添加ハムや有機野菜を挟んだ7~8種のサンドイッチを提供します。

▲色艶の良いプレッツエル。「パン卓」

▲ご夫婦で経営する「Cocon」。こんがり焼いたバゲットが芳ばしい

ここで味わうパンの時間

 パンは“持ち帰る”だけではありません。この街には、パンと一緒に過ごす時間を楽しめる場所があります。

 「ベーカリー パパン」は金土日のみ開店。セルフドリップのコーヒーとともに。広いイートインでゆっくり味わえます。人気はレモンパン。

 前橋市朝日町のココルンシティの隣に昨年12月オープンした「菜の花ベーカリー」。60種類のパンの販売のほか、イートインコーナーではスキレットで供される国産小麦100%の厚切りトーストが評判。焼き立ては、前橋の朝を贅沢にします。

 

▲「ベーカリーパパン」。コーヒーは自分で豆を挽いて、フィルターでドリップ

▲焼き立て厚切りトーストは数量限定。「菜の花ベーカリー」

 森に囲まれた「モッティーべーグル」。入口には約20種類の手作りベーグルが並んでいます。木漏れ日が差し込むイートインは、パンと自然の間から境目がなくなります。スープとサラダつきのベーグルセットでひと休み。

 「エブリパン前橋店」は川原町のジンズパーク内。カリッじゅわ塩パンやカレーパンが人気で、通りすがりの人まで振り向かせます。パンが街を動かしています。

 前橋こども公園前の「ラ・セーヌドゥ・レーヴ」。緑を眺めながらクロックムッシュとコーヒー。ただそれだけで、良い一日になります。

▲森に囲まれた静かなイートイン。「モッティーべーグル」

▲「エブリパン」はカレーパンが豊富

▲ジュワっと感が伝わる「ラ・セーヌドゥ・レーヴ」のクロックムッシュ

推しパンのある街へ

  前橋のパンは、暮らしの一部です。そしていまは、街をもっと面白くしています。

 あなたの“推しパン”は、きっと前橋にあります。次の休み、パンの街へ。お気に入りを一つ、持ち帰ってください。

※データは取材当時のもの。営業時間や価格に変更の場合あり

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