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【行こうリーディングシアター】 「手紙にこめられた思い」
萩原朔美さんに聞く 『ラヴ・レターズ』

2023.02.23

【行こうリーディングシアター】 「手紙にこめられた思い」
萩原朔美さんに聞く 『ラヴ・レターズ』

「リーディングシアターフェス 2022 IN マエバシ」のラストを飾る第8弾『ラヴ・レターズ』が2月26日(日)、前橋文学館で上演される。一組の男女が幼少期から交わす手紙の朗読劇。1990年8月から、パルコ劇場で上演され、これまでに500組近い役者が読み継いできた。今回、前橋文学館での萩原朔美館長プロデュース兼出演の『ラヴ・レターズ』は再々演となる。なぜこの「手紙」の朗読劇にこだわるのか、話を聞いた。(取材/中村ひろみリポーター)

手紙を声に出して読み、思いを伝える

萩原朔美館長就任によって2016年7月にはじまった前橋文学館リーディングシアター。「心にふれる手紙展」の連携イベントとして、まずは手紙の朗読である『ラヴ・レターズ』を選んだ。ところが朔美館長は「手紙は今や絶滅危惧種。でもかつての文学者にとって手紙は重要で、文学館にとっても欠かせないテーマだと気づき、繰り返し上演することに決めました」という。

『ラヴ・レターズ』を最初に翻訳し、演出した青井陽治さんは朔美館長の古くからの知人。はじめて手紙を読む時の初々しさを大事にするため、毎回、稽古は一回だけと決めていた。そんな青井さんにならい、前橋文学館で上演の際も、あまり前もって作り込まないようにしている。

▲「今後、文学館や博物館がバーチャルになっていく分、来館者を増やすためにもリアルな演劇や朗読の役割は増すよ」と朔美館長

2016年8月、閉館となる初代パルコ劇場で久しぶりに青井さんに会った朔美さんが「前橋文学館で『ラヴ・レターズ』をやったんだけど、朗読しながら泣いちゃったよ」と報告すると、「え?朔美さんが読んでくれたの?」ととても喜んでくれたという。その後再会する機会の無いまま、およそ一年後に青井さんが急死した。「それ以来ね、僕の中では、彼に『やってるよ』って伝えるためにも『ラヴ・レターズ』を上演し続けたいんです」と朔美さんは語る。

メールやSNSが主流となった今、書くにしても、返事を待つにしても、時間のかかる手紙は、伝達手段になりずらいのかもしれない。しかし、時間をかけた分、手紙には相手への思いがこもる。伝えたい相手は、目の前にいる人かもしれないし、もう二度と会えない人かもしれないが、その思いの深さはなにものにも代えがたい。

再々演となる今回、朔美さんの相手役を前橋出身の俳優、手島実優さんがつとめる。

▲手島さんの表現力にも注目

「最近の出演映画を観ると、彼女も大人の魅力が出てきた。日々変わる女優との共演を楽しみにしています」と朔美さん。その期待に応え、手島さんもこれまで見せたことのない表情を見せてくれるだろう。

「声の展示」として「萩原朔太郎大全2022」の一角を担ったリーディングシアターフェスも『ラヴ・レターズ』で全演目終了となる。「関わってくれた群馬のスタッフとキャストのみなさんに感謝しています。この成果を糧に、来年度も年四回の公演を予定しています」と朔美館長。前橋文学館は、春以降も引き続き、言葉を声にのせて伝える文学館であり続ける。

『ラヴ・レターズ』
原作:A. R. ガーニー
翻訳:青井陽治
・開演 2月 26 日(日)14時(開場は 30 分前)
・会場 前橋文学館3階ホール
・観覧料 500 円(3月4日から開催の文学館企画展観覧料含む)
・定員 50 人(要予約)
・出演:手島実優(俳優)、萩原朔美(前橋文学館館長)
・ピアニスト:佐山正之

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