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【行こうリーディングシアター】
「朔太郎をリズミカルに」生方保光さんに聞く『宿命』

2022.09.21

【行こうリーディングシアター】
「朔太郎をリズミカルに」生方保光さんに聞く『宿命』

前橋文学館のリーディングシアターフェス第3弾『宿命』が9月25日(日)に上演される。プロデューサーは劇団ザ・マルク・シアター主宰の生方保光さん。朔太郎の詩集を基に、かつてラジオドラマとして放送された作品を、生方さんが再度脚本化し、大胆な演出を施すという。今回の見どころを聞いた。(取材/中村ひろみリポーター)

朔太郎が求めた文学を演劇で表現

『宿命』は1939(昭和14)年に発行された朔太郎の詩集だ。西洋には音楽の感じられる文学として「散文詩」があるが、日本語で音楽を感じさせるのはむずかしい。そこで、朔太郎自身が、それまでの自分の作品の中から、音楽の感じられる詩を集め『宿命』として出版した。

朔太郎が西洋の「散文詩」にこだわったのは、そこに音楽だけでなく、思想的なものも感じていたようだ。

『宿命』は1963(昭和38)年、詩人、木原孝一さんによってラジオドラマとして放送された。「朔太郎のこだわりを大事にした木原さんの脚本は、少し哲学的でわかりづらい部分もあった。そこで私が再脚本化するにあたっては、『宿命』の中の詩が、昭和のはじめから十数年のあいだに発表されたことに着目し、詩の朗読に、その時代の朔太郎の実生活をからめた」と生方さんは言う。

▲弁士が詩を読み、朔太郎役が朔太郎の日常を演ずるとともに、詩を解説する(画像提供:劇団ザ・マルク・シアター)

さらに「この数年は妻と離婚した朔太郎が二人の娘を連れて前橋に戻り、実家での辛い生活を過ごしながら、再び上京するが、父・密蔵の死で再び前橋に戻るなど、生活の上でも苦労が絶えなかった。生活上の苦悩が、朔太郎の詩や文学へのこだわりを浮き上がらせると考えた」と続ける。

本作では、朔太郎言うところの音楽を「リズム」ととらえ、セリフと場面転換をリズミカルに進行させる。前橋文学館ホールの小さな舞台に黒幕と紗幕を活用し、詩の投影や役者の出入りでテンポを生むという工夫も。

その結果、「朔太郎が目指した散文詩を、少しでも演劇で実現できたのではないかと思っている。これを機会にぜひ朔太郎の『宿命』も読んでいただきたい」と生方さんは話す。

▲前橋文学館でもこれまでにない舞台の工夫が施されている(画像提供:劇団ザ・マルク・シアター)

『宿命』

・開演 9月25日(日)13時、15時(開場は30分前)

・会場 前橋文学館3階ホール

・観覧料 500円(文学館観覧料含む)

・定員 50人

・主催 前橋文学館

・協力 NPO法人波宜亭倶楽部

※次回のリーディングシアターは11月27日(日)、「『月に吠える』を声で立ち上がらせる」(脚本:栗原飛宇馬、潤色・演出:小出和彦)をお届けする。

問合せ先

前橋文学館

お問合せはこちら
027-235-8011
住所 前橋市千代田町三丁目12-10

うぶかた・やすみつ

生方保光

沼田市生まれ。1983年の劇団ザ・マルク・シアター結成時から主宰として脚本・演出を担当。県主催の演劇公演を数多く企画・運営し、小学生から高齢者まで出演させるなど地域文化振興に尽力。NPO法人ぐんま郷土芸能助っ人塾副理事長。