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【行こうリーディングシアター】
「あんがい生真面目な朔太郎」生方保光さんに聞く
『父・朔太郎を悩ませる女たち』

2022.12.18

【行こうリーディングシアター】
「あんがい生真面目な朔太郎」生方保光さんに聞く
『父・朔太郎を悩ませる女たち』

前橋文学館のリーディングシアターフェス第6弾『父・朔太郎を悩ませる女たち』が 12 月 25 日(日)に上演される。プロデューサーは劇団ザ・マルク・シアター主宰の生方保光さん。朔太郎の娘・葉子さんから見た朔太郎を生方さんが脚本に書き上げ、立体化した作品。その見どころを聞いた。(取材/中村ひろみリポーター)

人間・朔太郎を描く

原作は萩原朔太郎の長女で、前橋文学館館長、萩原朔美さんの母、葉子さんによる随筆集『父・萩原朔太郎』。娘の筆にかかれば、稀代の詩人もひとりの「父親」として描かれるわけだが、脚本化にあたって生方さんは、朔太郎を悩ませる4人の女性を登場させた。

ナレーションも兼ねる娘の葉子、朔太郎を溺愛する母親のケイ、娘2人を置いて学生と駆け落ちする妻の稲子、朴訥で色白の東北美人だった後妻の美津子。そこには、父として、夫として、子として悩む、人間・朔太郎が現れる。

▲稽古の中で生方さんは、一つひとつのセリフの意味だけでなく、役者の立ち位置も確認していく

「『月に吠える』や『青猫』といった詩集からは、鋭敏な感覚をもった詩人という印象ですが、娘・葉子が描く朔太郎は、娘にも、妻にも、母親にも、誠実に向き合おうとするがゆえに、寡黙となる男です」と生方さん。

表向きは女たちの恨みつらみが描かれるが、すべては朔太郎への愛情の裏返しでもある。

▲稽古場に本番の舞台の大きさを再現して、緻密に稽古する(写真提供: 劇団ザ・マルク・シアター)

いかに言葉を伝えるか

2022 年の生方さんは5 月の朔太郎忌はじめ、前橋文学館リーディングシアターでの潤色・脚本と計 4 本の朔太郎芝居を手掛けた。朔太郎の膨大な資料も勉強になったが、「リーディングシアター」という表現にも多くの気づきを得たという。

「素材が詩や文学、ラジオドラマと多様だったことに加え、リーディングシアターは演劇とも違う。けっきょく、いかに『言葉』を伝えるか、だと思いました」

「父・萩原朔太郎」の言葉を探る中で、生方さんは、朔太郎が今際の際に語る「夕顔」をもとに新たなシーンを生み出した。原作には無い。しかし、娘の葉子さんにとって大事な朔太郎を多くの人に伝えるリーディングシアターとなっている。

▲大きくはない前橋文学館の舞台に段差をつけることで表現の幅を広げる

『父・朔太郎を悩ませる女たち』

・開演 12 月 25 日(日)13 時、15 時(開場は 30 分前)
・会場 前橋文学館3階ホール
・観覧料 500 円(文学館観覧料含む)
・定員 50 人(要予約)
・主催 前橋文学館
・協力 NPO 法人波宜亭倶楽部
お問合せ・予約
前橋文学館
027-235-8011
前橋市千代田町三丁目 12-10
※次回のリーディングシアターは 2023 年 1 月 29 日(日)、『夜汽車の人―朔太郎の愛と詩の生涯』(原作:菊田一夫、構成:丸山博一、演出:中村ひろみ)をお届けする。

うぶかた・やすみつ

沼田市生まれ。1983年の劇団ザ・マルク・シアター結成時から主宰として脚本・演出を担当。県主催の演劇公演を数多く企画・運営し、小学生から高齢者まで出演させるなど地域文化振興に尽力。NPO法人ぐんま郷土芸能助っ人塾副理事長。