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【前橋シネマハウス支配人 日沼大樹のシネパラ】vol.1
「杜人(もりびと)環境再生医 矢野智徳の挑戦」

2022.08.05

【前橋シネマハウス支配人 日沼大樹のシネパラ】vol.1 
「杜人(もりびと)環境再生医 矢野智徳の挑戦」

造園家であり、環境再生医という肩書を持つ矢野智徳さんを3年間撮り続けたドキュメンタリー映画「杜人」(8月6日~上映)。今は誰でも手軽に映像作品を撮り編集することができる時代だ。本作の前田せつ子監督も技術、知識、機材のない中で矢野さんを追いかけ続けて、製作、公開に至っている。これは2017年~2018年に大ヒットした「カメラを止めるな!」のように低予算でも劇場公開し、場合によってはヒットするというネット社会の現れだろう。ただ本作はそんな便利で手軽な世の中とそれに慣れてしまった私たちがこれから長い時間をかけて考えていくべき、何かを提示してくれる映画だ。

大地の再生に取り組む造園家を描く

「杜人」の何が素晴らしいかといえば、やはり主人公の矢野智徳さんである。ドキュメンタリー映画の一番重要なことは“誰を撮るか”であり、その人間が素晴らしく共感性を持てる人物であればノンフィクションであるドキュメンタリーは最強だ。

矢野さんは矢野園芸の代表。造園業界や現代土木の世界、学術界でも見落とされてきた生態系全体に関わる大地の機能を「大地の呼吸」だと言い、活動を続けてきた。20年以上使い続けるツギハギだらけの作業着を着て「大地の再生講座」を行うなど少し変わり者に見えるが親しみやすい人柄だ。

そしてすべての植物や虫と共存し、風を感じ、大地の呼吸を良くしていく…。一見「風の谷のナウシカ」のナウシカのようなファンタジックに感じる彼の言動は、劇中の映像で現在の地球環境を教えてくれるノンフィクションへと変わっていく。ファンタジックに感じるのは私たちが環境を壊す生活無くしては生きていけないという精神になってしまっているのだろう。便利な世の中が当たり前なのだ。

かつての造園業は「植物は枯れるものだからとても良い商売になる」ということで広がりを見せたらしい。ただ彼の造園業はビジネスにはなり得ないだろう。

すべてがスピードに支配された現代で、早期の結果は最重要事項である。彼の造園は、見た目だけをすぐに良くするのでは無い。目に見えない地中の水脈から土壌から雑草から、すべてと共存して強い環境をじっくりと作っていく。まるで人の身体のように感じる彼の作業…大地も動物も呼吸と循環が一番大切なのだろう。

そんな矢野さんが私たちの常識を変える映画をぜひ観て欲しい。

「杜人(もりびと) 環境再生医 矢野智徳の挑戦」
監督:前田せつ子
時間:101分
上映日時:8/6(土)~8/12(金)①10:00~②16:40~
8/13(土)~8/19(金)①16:40~
トークイベント:8/7(日)10:00~上映終了後、前田監督他トークショー(予定)
会場:前橋シネマハウス

日沼大樹

日沼大樹(ひぬま・ひろき)
1986年、前橋市生まれ。東京農大二高―関東学院大卒。2016年、群馬共同映画社へ入社。2018年~、前橋シネマハウス支配人。2児の父。

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