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【前橋シネマハウス支配人 日沼大樹のシネパラ】vol.3
『失われた時の中で』

2022.09.28

【前橋シネマハウス支配人 日沼大樹のシネパラ】vol.3 
『失われた時の中で』

ベトナム戦争中、アメリカ軍が散布した枯葉剤。『失われた時の中で』は20年に渡って“枯葉剤被害”を題材にしたドキュメンタリーをつくり続ける坂田雅子監督の集大成とも言える作品だ。10月1日から14日まで、前橋シネマハウスで上映される。

枯葉剤被害で夫を亡くしベトナムへ

坂田監督が枯葉剤被害を撮り始めたのは夫、グレイグさんの死がきっかけだった。彼はベトナム戦争の帰還兵で、終戦後はアメリカから日本へ渡り世界を渡り歩く記者だったという。

大切な夫を枯葉剤の影響で亡くした監督は単身でベトナムに渡り、映像を撮り始めた。最初の取材では1年間、ベトナムで生活し、現地の人たちとコミュニケーションをとれるようにまでなった。

「ベトナム戦争の悲惨さを世界に、そして日本に届けたい」。必死の思いがあったのだろう。本作は20年の集大成にふさわしく、長年追いかけてきた監督だからこそ見えてくる戦争と枯葉剤被害の問題を私たちに投げかけてくれる。

     (C)Joel Sackett

作中で夫のグレック氏は「戦争を伝える上で特に重要なことは、そこで住む人々が戦後、どのような生活をしているか。そして戦争が彼らにどんな影響を与えたのかを知ることである」と言っている。まさに本作はその言葉の意味を伝えてくれるだろう。

過去ではなくいまだ現実

私は小学生の時に、「ベトちゃん、ドクちゃん」を知って衝撃を受けた。実際に同じような被害を受けた子どもたち、家族はものすごい数に上っている。そしてその子たちはいま、大人になっている。

一人ではとても生活できない彼らと家族を取り巻く環境は厳しくなるばかりだ。被害児施設は国の開発によって閉鎖が決定。子ども全員が被害を受けた両親は、子ども達を残して自分たちが死ぬことへの不安を常に抱えている。「もうだいぶ前のことだから大丈夫」ではすまされない切羽詰まった現実がそこにはある。

現地映像と、いまでも行われている裁判によって、日本人も無関係ではない、ベトナム戦争の本質を本作で知ることができるだろう。

     (C)Joel Sackett

『失われた時の中で』

監督:坂田雅子

時間:60分

日時:10/1(土)~10/7(金)①10:00~②15:40~

10/8(土)~10/14(金)①12:10~②17:55~

会場:前橋シネマハウス(前橋市千代田町5-1-16 3階)

日沼 大樹

日沼

日沼大樹(ひぬま・ひろき)
1986年、前橋市生まれ。東京農大二高―関東学院大卒。2016年、群馬共同映画社へ入社。2018年~、前橋シネマハウス支配人。2児の父。