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【萩原朔美の前橋航海日誌Vol.35】「河の表情が街の文化」
2024.04.30
詩を干してみた。軒下の竹の物干し竿に、布団のように日光を浴びさせると、道ゆく人がなんだろうかと振り返る。
広瀬川の欄干に、詩を並べてみた。散歩する人が、時々立ち止まって読んでいる。この、詩の短冊が少しずつ長くなって、左岸右岸を埋め尽くす日がやって来た時、河に新しい物語が始まるのだ。
田村隆一は、ロンドンのテムズ河はビートルズによって、パリのセーヌ河はシャンソンによって生き返ったと詩に記した。広瀬川は文学館によって、新しい物語を育むことになるだろう。全ての街のイメージは、河によって豊かさを獲得している。
最近は馬場川が美術の匂いを纏って再生した。
街の豊かさは、河の表情によって決まる。
街の美しさは、河の物語によって定着するのだ。
Sakumi Hagiwara
萩原朔美(はぎわら・さくみ)
1946年11月、東京都生まれ。寺山修司が主宰した「天井桟敷」の旗揚げ公演で初舞台を踏む。俳優の傍ら、演出を担当し映像制作も始める。版画や写真、雑誌編集とマルチに才能を発揮。世田谷美術館に版画、オブジェ、写真のすべてが収蔵されている。著書多数。多摩美術大学名誉教授。2016年4月から前橋文学館館長(現在は特別館長)。2022年4月から金沢美術工芸大客員教授、2023年7月から前橋市文化活動戦略顧問。