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【萩原朔美の前橋航海日誌Vol.61】
洗濯をすれば、自分が見える

2026.09.06

【萩原朔美の前橋航海日誌Vol.61】
洗濯をすれば、自分が見える

 

 毎日必ず洗濯している。人生初体験。暑いから汗かきまくるので、1日に何度か下着を交換する。だから洗濯物が溜まるのは仕方がないのだ。

 前橋生活は単身赴任みたいなものだから、洗濯から掃除、食事、ゴミ分別なんでもこなさなければならない。そこに自分という現象が色濃く浮き彫りされる。

 たとえば、料理に関心がない。料理を覚えて食べる事を楽しめば、どんなにか豊かな毎日になるか知れないのに、全くやる気が起こらない。

 考えてみると、私の母親は料理する事を楽しまない人だった。だから子供の頃、食事が楽しかった事など一度もなかった。おそらくその影響があるかもしれない。

 しかし、洗濯は案外楽しくやっている。どこにどう干そうかとか、干したり取り込んだり、畳んだり苦に感じた事が一度もない。不思議なものだ。

 人間の本質は、大金持ちになった時に現れる。宝くじが当たった時、その人が何をするのか。リアルな人間の本質が露呈する。同じように、単身赴任も、その人の本質が顕になる生活形態なのかも知れない。洗濯を楽しむなど、私は何とせこい後期高齢者なんだ(笑)。

Sakumi Hagiwara

 ※萩原朔美さんが前橋に来てから10年間、スマホを片手に散歩しながら前橋のまちを撮影した写真を集めた「音楽する写真-萩原朔美の前橋10年」は前橋文学館で開かれています。詳しくはこちらから。

萩原朔美(はぎわら・さくみ)

 1946年11月、東京都生まれ。寺山修司が主宰した「天井桟敷」の旗揚げ公演で初舞台を踏む。俳優の傍ら、演出を担当し映像制作も始める。版画や写真、雑誌編集とマルチに才能を発揮。世田谷美術館に版画、オブジェ、写真のすべてが収蔵されている。著書多数。多摩美術大学名誉教授。2016年4月から前橋文学館館長(現在は特別館長)。2022年4月から金沢美術工芸大客員教授(現在は客員名誉教授)、2023年7月から前橋市文化活動戦略顧問。