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【前橋シネマハウス支配人 日沼大樹のシネパラ】vol.5
『ミューズは溺れない』

2023.01.15

【前橋シネマハウス支配人 日沼大樹のシネパラ】vol.5 
『ミューズは溺れない』

第15回田辺・弁慶映画祭やインディーズ映画界の登竜門とされる第22回TAMA NEW WAVEでグランプリに輝いた青春映画。美術部員の女子高校生たちの心の動きを繊細に描く。前橋シネマハウスで1月14日から27日まで上映される。

最短記録で上映を決定

前橋シネマハウスの私の仕事で大半を占めるのは番組編成である。毎日ネットで新作や公開中作品の情報収集をしながら配給会社や監督からの電話やメールの対応をする。

作品資料やサンプル作品を見続けてシネマハウスの作品は決まっていく。年間にすると1000本以上の候補の中から選定する大変さもあるが、とても魅力的で楽しい仕事だ。もちろん1000本以上すべての作品を観ることはない。他の仕事の時間も考えると物理的に不可能なので、冒頭の30分くらいでそっとパソコンを閉じることも日常茶飯事である。

最後まで観れた作品の中から日程や他番組の客層、時間などを考慮して長いものだと数カ月かけてシネマハウスの番組は決定される。さて、前置きが長くなったが今回紹介したい作品「ミューズは溺れない」である。

(C)カブフィルム

本作は昨年の11月に淺雄監督から電話がかかってきた。「上映して欲しい」という電話は毎日のようにかかってくるので、いつものように「拝見します」と言って電話を切った。

その日はたまたますぐに確認して返答する必要がある作品がなかったこともあり、PCでサンプルを観ることにした。82分という送り手からも受け手からも素晴らしい時間の中で繰り広げられる青春物語である。

葛藤、友情、恋…。高校生であれば誰しもが本作の当事者として苦悩する可能性のあることが、なぜか実に清々しく描かれ晴れ晴れとした気持ちでエンディングを迎えていた。

本作の主人公、朔子は少し難しい家庭環境を持ちながら美術部員として活動し将来に不安を抱えている。その朔子の親友は最も近しい関係でありながら彼女から本心を打ち明けてもらえず、想い人が朔子に夢中という状況にまでなってしまっている。

美術部の一匹狼の西原は自分の思想や気持ちは誰にも理解されないと思い込み殻に閉じこもり朔子の絵を描き続ける。劇中の当事者たちはすごく難しい問題、悩みを抱えている。しかし私は何とも言えない気分の良さを感じながらエンディングを止め電話をかけた「淺雄監督、ぜひ上映させてください」と。作品紹介の電話から90分。私の最短記録である。

『ミューズは溺れない』
監督:淺雄望
時間:82分
日時:1/14(土)~1/20(金)①14:50~
1/21(土)~1/27(金)①17:10~
トークイベント:1/14(土)14:50-上映終了後 淺雄望監督舞台挨拶
1/19(木)14:50-上映終了後 淺雄望監督、萩原朔美前橋文学館館長によるトークショー
会場:前橋シネマハウス

日沼 大樹

1986年、前橋市生まれ。東京農大二高―関東学院大卒。2016年、群馬共同映画社へ入社。2018年~、前橋シネマハウス支配人。2児の父。