interview
聞きたい
【小原玲の伝言4▶︎】
つぶらな瞳に写真の「原点」思い出す
2022.03.09
友達にカメラを向けるのが大好き。写真の原点だった。報道写真家となり、ファインダー越しに多くの死を見てきた。写真が嫌いになったとき、アザラシの赤ちゃんに出会った。動物写真家として生まれ変わった。2021年11月。モモンガを撮るために出掛けた網走で倒れた。小原玲は最期まで写真家だった。
―編集者の思惑で事実が歪曲され、報道写真に嫌気がさしてきた。
「それよりも、きつかったのは自分の写真。ソマリアの難民キャンプでは餓死寸前の子供を探していた。もっと痩せた子、つまりはもっと死に近い子がいないか探していました。人の死とか、悲しみばかり写す。そんな自分が、カメラが大嫌いになった」
―写真家人生で最大の危機を救ってくれたのがアザラシの赤ちゃんでしたね。
「1枚の絵ハガキを見て、アザラシを撮ってみたくなった。1990年3月です。カナダに飛びました。『人間と自然との共生』をテーマに撮影しようか、構図はこんな感じでとか、いろいろ考えていたけど、一目見てそんなのが吹っ飛んだ。『ああ、なんてかわいいんだろう』。ただ夢中でシャッターを切った」
―「悲しみ」から「喜び」。写真が変わった。
「そう。前高時代、同級生を写して喜ばれ、自分もうれしかったこと。何で写真を撮るようになったのかを。つぶらな瞳を見て、僕の写真の『原点』を思い出すことができた。写真を通して、人が幸せになる、人生が楽しくなるためだったことを」
―動物写真家となり、日本にアザラシの赤ちゃんブームを巻き起こしました。シロクマやプレーリードッグも写しましたね。
「一番好きなのはマナティ。(体形が)僕に似ているから(笑)。一番平和に暮らしている動物ですね。大きいから襲われないし、襲わない。写真だけでは魅力を伝えきれないので、だれか文章を書いてくれる人がいないか探していたら、妻の堀田あけみと出会った。3年がかりで取材し、『マナティ 夢の人魚』という写真集を2人で出しました。とても素敵な文章を書いてくれました」
小原玲(おはら・れい)1961年2月
東京都生まれ。前橋高-茨城大人文学部卒。フライデーの専属カメラマンからフリーになり、報道写真家として活躍する。動物写真家に転じ、アザラシの赤ちゃんなどの写真集を多数出版。2021年11月、死去。享年60歳。
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