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【写真家・長瀬正太の視線Vol.10】
続けるということ

2023.09.03

【写真家・長瀬正太の視線Vol.10】
続けるということ

今回は9日から始まる「祈りの翼」と名付けた火の鳥写真の個展を前にし、「なぜ私は火の鳥を撮り続けてきたんだろう」と改めて思いを巡らせてみました。アイキャッチの写真は前橋花火大会2022で撮影した「火の鳥(Reincarnation)#3」です。

8年間で100万発以上

火の鳥写真の話をしている時に知人から、ふとかけられた一言

「飽きずに撮り続けられることが素晴らしい」

そう言われてしみじみ思った。「だって、面白いんだもん」と。

そう、撮っても撮っても正解がなく、相手は好き勝手に爆発して暴れる花火なので全く予想通りには動いてくれない。

お陰様で2015年の前橋花火大会から撮影を始めて8年間、100万発以上の花火を撮っているがそのほとんどはただグチャグチャとした失敗写真である。

それでも、繰り返し繰り返し「あーでもないこーでもない」と試行錯誤を続けていると、時折、誰も見たことのない世界が撮れる瞬間がある。

それがたまらなく面白い。

▲「The last song」(前橋花火大会2022にて撮影)

非常に僭越ながら…元プロ野球選手のイチローさんも「もっとこうしたら打てるようになるかもしれないって思うと楽しくって仕方がない」といった主旨のコメントをなさっていたと思う。

それこそ世界中の誰よりもストイックに練習をし、準備をし、本番で結果を出してきたイチローさんが言うのだから間違いない。

面白いことは続けられるのだ。

続けていれば自分の中に磨かれて研ぎ澄まされた感性が宿る。

私にとってはゲームや漫画に夢中となったことで培われた妄想力と「この線がたまらない」といった魂が震えるような線を選別する感覚が養われた。

その感性だけを頼りに「次はもっとこうしたら、なにかすごい1枚が撮れるかもしれない」と信じ、花火の打ち上がる会場の片隅でクネクネと怪しい動きをしながらシャッターを切り続けている。

 

▲「雛鳥の庭#1」(前橋花火大会2019にて撮影)

「祈りの翼」 火の鳥写真家 長瀬 正太 個展
期日:2023年9月9日(土)~18日(月・祝) 10時~17時
※12日(火)は休み
場所:ギャラリーあーとかん(前橋市上新田町680-12)

主な作品は「火の鳥(Reincarnation)シリーズ」と色とりどりな新作。A1ほどの大きなサイズからA4サイズほどの作品とキャンバスにプリントされた作品20点を展示する(メイン1点は1m×1.4m)。期間中は、会場に長瀬さんが在廊する。

写真家 長瀬 正太(ながせ しょうた)

1975年、大阪府生まれ。現在、前橋市を拠点に活動している。心温まる草花のマクロ写真や絵画のようにも見える風情ある風景写真を撮影。国際的な写真フェスティバルへの招待や国内での企画展示も多く、繊細な和紙印刷技術に定評がある。打上花火を独自の撮影法でとらえた「火の鳥写真」など新しい表現にも挑戦している。
■URL:https://shotanagase.myportfolio.com/
■火の鳥写真:https://shotart.myportfolio.com/
■Twitter:https://twitter.com/syouta0002