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【萩原朔美の前橋航海日誌vol.18】郷愁を呼ぶ郵便局
2022.12.11

子供の頃、祖母の家に行くと、お手伝いのハナエさんと呼ばれていた赤いほっぺたの人がいて、月末になると、近所の郵便局に行く。故郷に便りと送金するためだと彼女から聞いた事があった。昭和の郵便局には、そんな異郷で暮らす人達が沢山いたような記憶がある。人生の物語が交差する場所。それが郵便局だった。
先日、萩原朔太郎没後80年の記念切手が発売された。その贈呈式の時に、朔太郎の言葉を局内に掲載する事をお願いしたところ、すぐに賛同していただけた。
「郵便局といふものは、
港や停車場とおなじやうに、
人生の遠い旅情を思はすところの、
魂の永遠ののすたるぢやだ。」
前橋の46の全郵便局に貼られた朔太郎の言葉である。「水とみどりと詩の街」だからこそ、言葉が郵便局に溶け込んでいるように見える。
いつまでも、ノスタルジアを感じさせてくれる場所であってほしいと、昭和生まれの私は思うのだ。
Sakumi Hagiwara














萩原朔美(はぎわら・さくみ)
1946年11月、東京都生まれ。寺山修司が主宰した「天井桟敷」の旗揚げ公演で初舞台を踏む。俳優の傍ら、演出を担当し映像制作も始める。版画や写真、雑誌編集とマルチに才能を発揮する。昨年、世田谷美術館に版画、オブジェ、写真のすべてが収蔵された。著書多数。現在、多摩美術大学名誉教授。2016年4月から前橋文学館館長。2022年4月から、金沢美術工芸大客員教授、アーツ前橋アドバイザー。
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