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【グルメ散歩⑩】
前橋・移住者レストラン
全国から来た店主の味

2026.06.09

【グルメ散歩⑩】
前橋・移住者レストラン
全国から来た店主の味

 北海道、大阪、長野、東京から前橋へ。全国各地で培った技や感覚を持つ人たちが、この街に店を開いている。軽井沢仕込みのクレープ、北海道のポテト料理、元力士のうどん、こぶし大のおにぎり、ジャンボ餃子、畑から届く一皿。移り住んだからこそ生まれた味を、散歩してみた。

故郷の味を、前橋で開く

 長野から移住した小林友美さんが営む「アシカのこむらがえり」は、皿で味わうクレープの店。小林さんは軽井沢の老舗「ブロンコ」で学んだ味を、前橋で再現している。

 特徴は2台の焼き台を使う調理法だ。1台は高温で生地を香ばしく焼き上げ、もう1台は低温で具材を包むために使う。外は香ばしく、中はもっちり。手で持って食べるクレープとは違い、フォークとナイフでゆっくり味わう一皿になる。

 軽井沢で覚えた味が、前橋の住宅街で新しい表情を見せている。

▲温度の違う2台の焼き台で

▲ロースハムチーズサラダ

 北海道出身の田中俊哉さん、亜実さん夫妻が開いた「エメ・ポテト」は、ポテト料理の店。主役は北海道産キタアカリだ。昼はプレートランチ、夜はポテトサラダやニョッキなどに姿を変える。ほくほくとした甘みを生かした料理は、じゃがいもそのものへの愛情が伝わってくる。

 お米は北海道のななつぼし。余市のワインも取りそろえる。群馬にいながら、北海道の畑や食卓を感じられる場所。店名の「エメ」には、愛するという意味もある。ポテトで、前橋に愛を返しているような店だ。

▲豪華なランチプレート

▲オーナーの田中さん夫婦

移り住んだから生まれた一皿

 大阪出身の浜亮太さんが開いた「どすこいうどん浜ちゃん」は名前からして強い。浜さんは元力士で、国内最重量の現役プロレスラー。田舎暮らしを求めて前橋に移住した。

 看板のちゃんこうどんは、鶏団子や豚バラ、野菜をたっぷり使った一杯。200㌔の体で足踏みする中太のうどんは、喉越しがよく、鰹節と鶏ガラを合わせた出汁によく絡む。大阪から来た人が、前橋で力士のまかないを丼にしたような、豪快で温かい味がある。

▲「いらっしゃいませ」と浜ちゃん

▲塩のちゃんこうどん

 「ぎょうざや へいはち食堂」は、東京から移住した市川貴史さんが開いた餃子と焼売の専門店。市川さんは都内で惣菜や弁当の店を営んでいたが、赤城山に魅了されて前橋へ移った。

 看板は通常の約3倍あるジャンボ餃子。直径13㌢の皮に、豚肉やキャベツなどの野菜をたっぷり包む。具材は粗めに刻み、噛むほどに食感が残る。焼売も1個60㌘と大ぶりだ。惣菜店で磨いた感覚があるから、ただ大きいだけでは終わらない。食卓の主役になる餃子だ。

▲餃子定食は店で食べられる

▲シュウマイも大きい

赤城のふもとに根を下ろす

 赤城南麓の一軒家カフェ「カフェ ジッカ」は、東京から移住してきた檀原さやかさんが切り盛りする。看板はおにぎりの昼セット。鮭、たらこ、梅干し、昆布の4種から選べる。ふっくら炊いた米を、空気を含ませて握ったおにぎりは1個220㌘。こぶし大の存在感がある。具だくさんの味噌汁に6品の副菜が付き、野菜の力強さも伝わる。

 東京から移ってきた人が、赤城のふもとで「家のごはん」をもう一度作り直しているような店だ。

▲おかずが6品ついた昼セット

▲オーナーの壇原さん

 粕川町の「我ん家(ワレンチ)」は、東京で店を営んでいたシェフ、武藤裕司さんが2020年に赤城南麓へ移住して構えた店。昼、夜ともに完全予約制のコース料理を提供する。

 自ら畑で育てる朝採りの野菜に、淡路島や富山から届く魚や肉を組み合わせ、和の技法とフレンチを掛け合わせた一皿に仕立てる。よりよい環境を求めて移り住んだ料理人が、前橋の北で、自分の店の形を見つけている。

▲ランチの前菜

▲お肉のメインコース

▲東京から移住した武藤シェフ

※データは取材当時のものです。料金や営業時間に変更のある場合あり。