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「わかりやすく、楽しく」
生方保光さんに聞く『ただ港だけが故郷だ』

2022.07.29

「わかりやすく、楽しく」
生方保光さんに聞く『ただ港だけが故郷だ』

前橋文学館のリーディングシアターフェス第2弾『ただ港だけが故郷(ふるさと)だ』は7月31日に上演される。プロデューサーは劇団ザ・マルク・シアター主宰の生方保光さん。劇作家、演出家、俳優といくつもの役割をこなす生方さんは、東出昌大さんの登場でも話題になった5月の第50回朔太郎忌でのリーディングシアター「さんにんふたくみ」の脚本・演出も務めた。今回の見どころを聞いた。

テーマを身近なものにする

今回の戯曲は、萩原朔太郎の二つの対話詩集「夢を追う人」と「天に怒る」をもとに、栗原飛宇馬さん(萩原朔太郎研究会幹事)がアレンジした作品である。

朔太郎は、近代化における日本人の自己矛盾をテーマにしていたようだが、私が潤色する際は、これを悩める大学生・岸本冬樹の姿にフォーカスし、テーマを身近なものにすることで作品全体をわかりやすくした。劇中、冬樹は何度となく難解な対話詩集「天に怒る」の一節を朗読する。詩を諳んじることが、いつしか先人の思考を辿ることとなり、やがて己の悩みの解決法は外部にではなく、自身の中にあることに気づく。

▲本番に向けて前橋市中央公民館での稽古(画像提供:劇団ザ・マルク・シアター)

その過程を音響や照明で補足することで、見どころをわかりやすく提示した。初演は設備も完備された大きなホールだったが、再演する前橋文学館のホールはあまり設備のない小さなホールである。そこで照明機材を持ち込み、場面の切り換わりにメリハリをつけ、効果音はお客様の目の前で波の音や風の音を出す。言わば「見えるラジオドラマ」である。

この2年間は多くの人がコロナで大変な思いをした。私たちの劇団は昨年8月に高崎芸術劇場で初めて公演し、朔美館長にも出演いただいたが、感染防止対策のため、定員を3分の1に縮小しなければならなかった。そして第7波が到来している。

でも、文化・芸術は歩みを止めるわけにはいかない。

それは先人から受け継いだ郷土芸能とともに、地方の演劇を楽しみながら続けてきた我々の使命だとも感じている。

こんな時だからこそ、むしろゆっくりと作品を堪能して、萩原朔太郎の文学を味わっていただきたい。そんな機会を生み出せればと思っている。

▲フェス第一弾「猫町観光案内」。この時も生方さんは俳優として出演(画像提供:前橋文学館)

『ただ港だけが故郷だ』

・開演 7月31日(日)13時、15時(開場は30分前)

・会場 前橋文学館3階ホール

・観覧料 500円(文学館観覧料)

・定員 50人

・主催 前橋文学館

・問い合わせ 前橋文学館(☏027−235−8011)

(脚本 栗原飛宇馬、潤色・演出 生方保光、出演 鈴木ひかり、郡司厚太、見城由香、大月伸昭、淺原美佐、萩原朔美)

▲「ただ港だけが故郷だ」のポスター

うぶかた・やすみつ

沼田市生まれ。1983年の劇団ザ・マルク・シアター結成時から主宰として脚本・演出を担当。県主催の演劇公演を数多く企画・運営し、小学生から高齢者まで出演させるなど地域文化振興に尽力。NPO法人ぐんま郷土芸能助っ人塾副理事長。