interview

聞きたい

【聞きたい藤本壮介×平田晃久6▶︎】
残された奇跡、時間かけて磨く

2022.11.30

【聞きたい藤本壮介×平田晃久6▶︎】
残された奇跡、時間かけて磨く

前橋市が何十年と抱えていた中心街の再開発事業がいよいよ始動します。大きな施設の移転も伴う大規模なプロジェクトは多額の資金と長い時間がかかります。街の風景が一変してしまう懸念もあります。お二人からアドバイスをいただきました。

いまある街と接続する形で

橋本 白井屋ホテルができ、まえばしガレリアが来年3月に完成します。弁天通りにもユニークな集合住宅の工事が始まります。

そして、長年、前橋市が抱えていた課題として、市立図書館やスズランという、地方ではほとんど閉館されている中で頑張っている施設の移転を伴うスケールの大きな再生事業が始まります。世界各地の変容を見てきた二人は前橋のこうした動きをどうみていますか。

藤本 まさに「めぶく。」ですよね。僕が思うのはいままでのプロジェクトは比較的、規模の小さいものを既存の前橋の街に差し込んでいくことで、街を活性化させるという方法でした。それがすごくうまくいっていました。

再開発は規模が大きくなりますよね。そのときに、いまある前橋の街だったり、ヒューマンスケールだったりと、うまく接続する形で開発できればいい。

▲再開発はいまある街と接続するようにと注文する藤本さん

規模が大きいということは勢いや魅力が増えていくインパクトは大きくなっていくんで。

でもこれが、周りの街を押しのけちゃったら、意味がないですよね。周りを引き立てつつ、周りと連続していけば繋がっている感じがします。さらに新しい前橋という大きな魅力を作れるんじゃないかな。

地方都市再生のモデルに

平田 歩き回って楽しい街、ヒューマンスケールの街っていうのが残っているのが、前橋の大きな魅力ですよね。そこに歴史のあるエリアと、それから利根川の支流という、馬場川とか、広瀬川が流れている。

既存のレイヤーが、魅力的に重なっていて、街の魅力が作られていく。それが奇跡的にこの21世紀にまで残っている。

さらにそこに、奇跡的に街の魅力を生かすように、新しいプロジェクトを適切な場所に適切なスケールで差し込んでいくっていうのが、本当にこの前橋の、まさに日本の最先端のプロジェクトなんじゃないかなという気はしますね。

▲平田さんは日本の最先端プロジェクトになると期待を込める

橋本 確かにそんな気がします。

平田 街っていうのは一回壊しちゃうと、絶対元には戻りません。それが残っていて、しかも残しながら新しく生まれ変わらせようという動きが前橋にはある。これからの地方都市再生のモデル、街を蘇らせるモデルになる街だと思います。

橋本 街づくりにおける建築の役割って、誰でも参加できるお祭りみたいなものだと思います。建築に携わる人たちはもちろん、通りすがりに日々進行していく建築の過程を眺めているだけでも関われるし、完成後に長年にわたってたくさんの人々が交流できる。

素晴らしい建築体験を通して、きっと何かが「めぶく。」。お二人がそうした要素を手掛けた建築物の設計に込めてくれたのかなと勝手に思っています。建築の力も一つの要素として、前橋の街をめぶかせていけると期待しています。

▲まえばしガレリアを楽しむゲストのイメージ

藤本壮介(ふじもと・そうすけ)

1971年、北海道生まれ。東京大工学部建築学科卒。2000年に建築設計事務所を設立する。フランス・モンペリエ国際設計競技で最優秀賞に輝いたのを皮切りに、数々の国内外のコンテストを制している。県内では白井屋ホテルのリノベーションのほか、「T House」を設計。

平田晃久(ひらた・あきひさ)

1971年、大阪府生まれ。京都大大学院工学研究科修了。伊東豊雄建築設計事務所に勤務し、2005年に独立する。JIA新人賞、ベネチアビエンナーレ国際建築賞金獅子賞などを受賞。京都大教授。太田市美術館・図書館の設計で2022年日本建築学会賞の作品賞に輝いた。

橋本薫(はしもと・かおる)

1977年前橋市生まれ。「めぶく街づくり」に関わる様々な領域を繋ぎ、横断的に活動、前橋ビジョンを推進している。前橋まちなかエージェンシー代表理事。

▲対談する藤本さん(中)、平田さん(右)と進行役の橋本さん(左)