interview

聞きたい

【聞きたい藤本壮介×平田晃久2▶︎】
建物が地面から生えてくる

2022.11.24

【聞きたい藤本壮介×平田晃久2▶︎】
 建物が地面から生えてくる

藤本壮介さんが手掛けた白井屋ホテルに続いて、前橋市中心街に平田晃久さん設計の「まえばしガレリア」が来春誕生します。地上4階建てのマンションで、1階は中庭を囲むようにギャラリーやレストランが入ります。どんな施設になるでしょうか。

緑で覆われたテラスを全戸に

橋本 白井屋ホテルが完成するまで6年半かかりました。そして、新たに平田さんが計画している「まえばしガレリア」の建築が構想から5年もの歳月を経て始まりました。

平田 「Qの広場」と呼ばれていた場所です。広場ですが、人が住む場所もあるし、お店もある。あるいは、特に目的がなくても人がくつろぐような場所があったり、通り過ぎて見ていくだけで楽しかったりっていうような雰囲気の場所を造ろうっていう計画でした。

全戸にテラスがあるんです。コロナの前に構想したんだけど、コロナになって、さらに屋外で快適に過ごせるような場所というのが大事になっていくんじゃないかな。

▲平田さんはまえばしガレリアに生命感のある大樹をイメージした

橋本 ガレリアを造るとき、白井屋ホテルと通ずるものを含めるといった意識はありましたか。

平田 白井屋は藤本さんが街の中にもともとあったものを、もう一回掘り起こすようにして、生きている流れをもう一回、そこに送り出すような感じで造った。土手だったところに文字通り、緑をめぶかせている。僕もガレリアを1本の大樹みたいな、力強い生命感のあるものにしたいなと思いました。

ただ、ここはいわゆる繁華街で、馬場川のような流れがあるわけでもない。もう少し都市的な形でめぶきを表現できないかと。それで、ワイルドな感じのする壁面緑化をできないかなって思い、緑で覆われたテラスがいっぱいある住宅を造って、木の下に人が集まるみたいな、シンプルな構想に至りました。

橋本 緑が共通します。それはやっぱり「めぶく。」のビジョンから繋がっているものでしょうか。

平田 そう思います。ただ単に緑があるっていうだけじゃなくて、建物が地面から生えてくるみたいな勢いというか、生命力を持ったものにしたい。流れも止めないで、穴が空いていて、空気が抜けていくというか、循環するっていう。それは流れているっていう感じを大切にしたいなって思って設計しました。

空に抜ける中庭の真ん中

藤本 手前の広場に入っていくところが大きく、スケール感がある。でも、全体的には分割的なスケールがある。両方あるのはいいよね。

▲ガレリアのコンセプトを高く評価する藤本さん

平田 そう、周りには結構そういうヒューマンスケールな小さな建物がいっぱいある。一方で、ちょっと行くと大きな建物もある、潮目みたいな場所。ヒューマンさと大きさ、両方あるような建物がいいかなと思ったんですね。

藤本 中庭の真ん中は空に抜けているんですか?

平田 抜けています。

藤本 こういう場所って、前橋にあまりなかったかもしれないですね。

橋本 そうなんですよ。前橋に来た人はみんな空の大きさとかを褒めてくれますが、囲まれた空の風景っていうのがあまりないんです。なので、すごく楽しみな建築物です。

▲まえばしガレリアの完成予想図

藤本壮介(ふじもと・そうすけ)

1971年、北海道生まれ。東京大工学部建築学科卒。2000年に建築設計事務所を設立する。フランス・モンペリエ国際設計競技で最優秀賞に輝いたのを皮切りに、数々の国内外のコンテストを制している。県内では白井屋ホテルのリノベーションのほか、「T House」を設計。

平田晃久(ひらた・あきひさ)

1971年、大阪府生まれ。京都大大学院工学研究科修了。伊東豊雄建築設計事務所に勤務し、2005年に独立する。JIA新人賞、ベネチアビエンナーレ国際建築賞金獅子賞などを受賞。京都大教授。太田市美術館・図書館の設計で2022年日本建築学会賞の作品賞に輝いた。

橋本薫(はしもと・かおる)

1977年前橋市生まれ。「めぶく街づくり」に関わる様々な領域を繋ぎ、横断的に活動、前橋ビジョンを推進している。前橋まちなかエージェンシー代表理事。

▲対談する藤本さん(中)、平田さん(右)と進行役の橋本さん(左)