interview
聞きたい
【聞きたい藤本壮介×平田晃久5▶︎】
「めぶく。」前橋、街づくりのモデル
2022.11.29
糸井重里さんが名付けた前橋市のビジョン「めぶく。」。2016年に発表されてから、藤本壮介さんと平田晃久さんが建築物の設計を通じて、前橋の街づくりに深くかかわるようになりました。前橋版の街づくりは全国のモデルになると絶賛しています。
進化続ける白井屋ホテル
橋本 前橋市が2016年に「めぶく。」というビジョンを打ち立ててからの6年間の街の変化を、2人はずっと見てこられました。どんな風に映ってきたのでしょうか。
藤本 「めぶく。」のビジョンが発表され、市民の間にどんどん街に対する意識が広がっていったのと並走するように白井屋ホテルの計画が来たので、自分たちの意識の中でも街全体を見据えながら造っていくんだろうっていうのがあった。育つのを待っているみたいなね。すごく幸せな体験なんですよね。
いろんなアイディアが時間をかけていくと、多様性を保ったまま調和していくというか。特に白井屋はいろんなデザイナーが参加していたから、不思議な調和を持ってあそこに立ち上がれたというのが、僕にとっても本当に驚きの経験だったんです。
橋本 藤本さん、完成後もよく来られますね。
藤本 毎週のように新しい企画だったり、音楽イベントだったりとか、常に動いている感じがする。だから僕も行くたびに、まだあの建物が、出来上がって完結して終わりっていう感じが全然なくて、常に、前橋とともに進化していると感じる。
まえばしガレリアと連動
橋本 まえばしガレリアができたら、回遊するのが楽しいですね。
藤本 平田の建物ができたら、そことの連動とか、いろんなことが起こり得ますよね。その、まさにめぶいていく感じというのが、継続していくというのが、すごく魅力になっている気がしますね。
平田 いま前橋で起こっていることは、本当に新しいことだと思います。巨大な建物っていうのはいくらでもあるんですよ、世界中に。
でも、前橋の街って、不思議とテクスチャーが細かかったり、いろんな粒がある感じが、まだ残っている。例えば、東京の一角なんかだと、大きなブロックに入れ替わっていくけど、そうじゃない魅力がある。
それがなんか、ものすごく人を惹きつける魅力になる可能性がある。何もないと人は動かないけど、何かがあると急に変わるっていうのは起こりうる。そういう自然な魅力っていうんでしょうか。もともと前橋が持っていた魅力を、ぐっと引き寄せてきて別の形にすることで強さが生まれるといい。
藤本 いろいろな人がレストランを始めたり、お店を開いたりして、古い前橋が持っている魅力を引き立てながら、新しいものが有機的にどんどん育っていくような感じが、これからの街づくりの強力なモデルになるんじゃないかと思います。
同時多発的にかつ時系列的にずれながら継続している。終わりでないし、たまに起こるでもない。結果として、いままであった街も含め、全体が生きてくるのはいいことでしょう。
藤本壮介(ふじもと・そうすけ)
1971年、北海道生まれ。東京大工学部建築学科卒。2000年に建築設計事務所を設立する。フランス・モンペリエ国際設計競技で最優秀賞に輝いたのを皮切りに、数々の国内外のコンテストを制している。県内では白井屋ホテルのリノベーションのほか、「T House」を設計。
平田晃久(ひらた・あきひさ)
1971年、大阪府生まれ。京都大大学院工学研究科修了。伊東豊雄建築設計事務所に勤務し、2005年に独立する。JIA新人賞、ベネチアビエンナーレ国際建築賞金獅子賞などを受賞。京都大教授。太田市美術館・図書館の設計で2022年日本建築学会賞の作品賞に輝いた。
橋本薫(はしもと・かおる)
1977年前橋市生まれ。「めぶく街づくり」に関わる様々な領域を繋ぎ、横断的に活動、前橋ビジョンを推進している。前橋まちなかエージェンシー代表理事。