interview
聞きたい
【聞きたい阿部智里さん4▶︎】
赤城山の自然、作品に投影 新刊『烏の緑羽』を出版
2022.10.27
八咫烏シリーズに新刊が加わりました。11作目となる『烏の緑羽』。主要人物でなかったキャラクターにスポットライトを当てました。阿部智里さんは過去の作品を読み返すことはないそうです。次回作を最高のものにしたい。そんな思いがあるようです。
年1冊のペースで書き上げる
―高校時代から温めていた八咫烏スリーズは累計180万部を突破しました。10月7日に新刊『烏の緑羽』が出版されました。
外伝と合わせてシリーズ11作目となります。2012年に『烏に単(ひとえ)は似合わない』でデビューしてから、年1冊ほどのペースで出しています。
―『烏の緑羽』はどんな内容なのでしょうか。少しだけ教えてください。
これまで主要人物ではなかったキャラクターたちが主人公になります。「忠臣とは何か」という問いかけから、若い時代の彼らの青春と葛藤、成長を描いたつもりです。
これまでスポットライトを当ててこなかったキャラクターを取り上げたのは、物語上それが必要だったからです。前から外伝として書きたいと考えていたエピソードではありますが、シリーズラストまでの構成とテーマを考え、あえて本編として書き込むことにしました。
―新刊を書き上げる際の小説家の生活ってどんなのでしょうか。よくホテルに缶詰めにされるとか聞きますが。
私は書けるときと書けないときの差が極端なんです。だから、タイムスケジュールがない。書けないと、ラジオ体操をしたり、無駄に掃除したり、料理したり。テスト前みたいに現実逃避します。
逆に「書ける!」となったときは、1日中書き続けて、体力の消滅とともに寝るといった具合です。
文藝春秋には「執筆部屋」という缶詰め部屋があり、私はヘビーユーザーでした。大学院生のときは週の半分は寮に帰れましたが、もう半分は執筆部屋に寝泊まりしていました。大変ではあったけど、強制的に切り替えることができたので、助かっていましたね。
現実に対して問いかける
―これまでの作品で、自身で一番気に入っている作品は何でしょう。
書き終わった作品で気に入ったものは何一つありません。過去に書いたものを読み返すこともあまりない。出来栄えに満足いかないからです。構想の時点では絶対におもしろくなると思っていたのに、作品になると「もっと上手に書けたはず」と後悔ばかり。
次に書くものに期待します。
―八咫烏はすっかり代名詞になりましたが、これからどんな小説を書きたいですか。
常に心掛けているのは現実に対して問いかけを含んだ作品。今後、何を書こうともそれは変わらないと思います。
あべ・ちさと
1991年、前橋市生まれ。荒砥中-前橋女子高―早稲田大文化構想学部—大学院修士課程修了—博士課程中退。デビュー作『烏に単(ひとえ)は似合わない』は史上最年少の20歳で松本清張賞を受賞した。八咫烏シリーズは累計180万部を突破。