interview
聞きたい
【昭和高校球児物語-前高 完全試合のキセキ-▶60】
総集編・高校1年夏
2023.05.15
エース、主砲にアクシデント
22年ぶりに県王者に輝いた前橋高。第1シードで迎える夏の大会を制し、甲子園に出場するため、これまでとは比較にならない猛練習が始まりました。
容赦ないノックを浴びせるのはOBでコーチをしていた小平勲さん。捕球できる限界の数㌢先の内野ゴロ、ファウルラインぎりぎりの外野フライなど、そのノックは芸術的ですらありました。
英語の先生だった内山武先生もノックの名手。試合前の球場でのノックの最後、キャッチャーフライの高さといったら、思わずスタンドから歓声が飛び交うほどでした。
昭和高校球児物語の筆者、川北茂樹さんは「後年、改めて思うことだが、小平さんといい内山先生といい、当時の部員たちは全国レベルのノックを、少人数だったがゆえにたっぷりと受けていたといってよいだろう」と振り返っています。これも、センバツ甲子園出場、完全試合の達成に大きく貢献したのでしょう。
ただ、過去な練習に体力のない1年生はみな限界ぎりぎり。内野守備にかけては1番だった有望な選手をはじめ、3人が野球部を去っていきました。2人はラグビー部で活躍しました。
夏の大会を前にチームにとって大きな痛手となるアクシデントが起こりました。練習試合で1塁手の外池悟がバント処理の際、走者のラフプレーともとれる走塁で交錯し大けがを負ってしまいます。打撃絶好調だった外池がスタメンで出場できなくなりました。
加えて、腰痛が悪化していた下手投げのエース、石山佳治がマウンドに立てなくなりました。投打の主力を欠いたチームに動揺が走ります。
初戦の相手は大間々高校。実力差を考えれば、エースと主砲抜きでも十二分に勝算のある相手ですが、いつもの前高野球ができません。3対4。第1シードがまさかの初戦敗退。3年生にとってはあっけなくも、短い夏になりました。
野球にIFはありませんが、もし、石山、外池が万全の状態であったら、夏の甲子園出場は現実味を帯びたでしょう。
1、2年14人で新チーム始動
3年生7人が引退し、2年生5人、1年生9人の総勢14人で新チームを結成します。少ないですね。ただ、これが一人一人の能力を高め、連携を深めることにつながります。
他の強豪チームが夏の大会を戦っている中、再び猛練習が始まりました。もしかしたら、これが秋季大会の快進撃につながったのかもしれません。
8月に入り、1泊で軽井沢に旅行に行きました。大部屋に全員で寝泊まりします。ちょっと、気が緩み大きな声になったらしく、隣の部屋から「少し静かにしてくれませんか」と注意された。
すると、顧問の戸部正行先生が「はいよーっ」と一言。礼儀正しい先生でしたが、ちょっぴりお酒が好き。このときももしかしたら、いい気分でいたのではないかと勝手に推測しました。
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