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【萩原朔美の前橋航海日誌Vol.42】
あと 何 キロ

2025.02.07

 【萩原朔美の前橋航海日誌Vol.42】
あと 何 キロ

 見かけると、ホッとする。路面にプリントされている「生涯学習センター0.8Km」、「前橋駅南口1.4Km」などの表示だ。歩行者というより、多分自転車利用の人向けだろう。縦長に表示されているから、自転車の高さから見やすくなっている。

 私は歩き専門だけれども、この表示に出会うと、その場合が目的地ではないのに、安心感が湧いてくる。もう少しだから頑張れと、その表示が囁いているような気がしてくるからなのだ。

 ほとんどの道路表示は、注意勧告だ。止まれ、スピード落せ、左右見ろ。命令されてばかりの言葉の中にあって、あと何キロで着きますよのマークは、心が和む。前橋の道は優しいのである。

 

Sakumi Hagiwara

萩原朔美(はぎわら・さくみ)

1946年11月、東京都生まれ。寺山修司が主宰した「天井桟敷」の旗揚げ公演で初舞台を踏む。俳優の傍ら、演出を担当し映像制作も始める。版画や写真、雑誌編集とマルチに才能を発揮。世田谷美術館に版画、オブジェ、写真のすべてが収蔵されている。著書多数。多摩美術大学名誉教授。2016年4月から前橋文学館館長(現在は特別館長)。2022年4月から金沢美術工芸大客員教授、2023年7月から前橋市文化活動戦略顧問。