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前橋の日本画家、須藤和之さんの個展
画廊翠巒で8日から
2025.02.08

現代日本画界の正統派の中央を歩む、前橋市在住の日本画家、須藤和之さん(写真左)の個展が、画廊翠巒で始まった。16日まで。全国各地で開催される個展は、毎年2月に同画廊からスタートする。「その年の須藤さんの作品テーマを宣言するような位置付け」と、画廊代表の梅津宏規さん。新作21点が展示される。
(取材/柁原妙子リポーター)
癒しのひとときを
「人生には大変なことがあるが、絵が、ふっとひと時落ち着くことができる材料になれればいいなと願っています」と須藤さん。
「人々が生きることが現代よりもはるかに困難だった昔、絵や彫刻、建築物は、救いとして象徴されるものでした」と、梅津さんは教えてくれた。
須藤さんの絵に込める願いは、古の人が絵画に込めた祈りと重なる。

吉兆が見える
日本画には縁起担ぎという側面もある。「神道の影響もあったのでしょう、日本には全てのものに命が宿っているという考えがあり、縁起を担ぐという意識が強いようです」と梅津さん。
一番大きな作品「木とともに」は、明るい緑のグラデーションで描かれている。創業125年、前橋市の「平方木材」の社長夫妻から、新社屋落成の記念にと須藤さんへ依頼されたもので、二人の願いが幸先の良いモチーフで表されている。
「中央で光を浴びている幼木は、木の種類は檜で、木材の中でも鳥居や寺社仏閣の建材として使われる崇高な存在とされます。2羽の鳥が連れ立つ姿は友情や協調性を、飛翔は発展を意味します」
画面から、樹木に対する畏敬の念や、次の世代の明るい未来を予感させる。

作品「森のいのち」は、黄色から茶色で描かれた深層の森の中、水辺に横たわる朽木に一羽の鳥が佇む。その姿は青一色で描かれ、何の鳥かはわからない。
「ただその“存在”を描きたくて、最近は具体的には描かなくなりました。何に見えても、その人が見えた通りで良いのです」と須藤さん。
そこで梅津さんは「幸せの青い鳥、と言いますよね」と縁起を探すヒントで応じてくれた。
どんな“吉”を見出すか、そんな鑑賞の仕方も楽しい。

須藤和之 展 -木とともに-
会期 2月8日(土)〜16日(日)10時30分〜19時※最終日17時まで
火曜休廊
会場 画廊翠巒(すいらん)(前橋市文京町1-47-1)