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「月に開く」9月で店仕舞い
弁天通りに5年、確かな足跡

2023.09.24

「月に開く」9月で店仕舞い
弁天通りに5年、確かな足跡

前橋市中心街の最北にある弁天通りの「ブックバー 月に開く」が9月いっぱいで閉店する。本好きが集まる宿木のようなバーとして5年前に誕生、にぎわいを失った商店街で小さくともキラリと光る存在だった。常連からは惜しむ声が寄せられている。

朔太郎ファンが前橋で開店

「月に開く」は萩原朔太郎の詩を愛し東京・新宿ゴールデン街で「プチ文壇バー 月に吠える」を経営していたジャーナリスト、肥沼和之さんが2018年5月に開店した。

朔太郎の第一詩集である『月に吠える』を無断で店名にしたことを詫びる手紙を孫の萩原朔美さんに出したところ、朔美さんがふらりとバーに立ち寄り、快く受け止めてくれたのが前橋への出店のきっかけとなった。

シャッター街だった弁天通りを活性化させたいと、東京との二重生活をしながら店を切り盛りした。好きな本を片手にアルコールやコーヒーを楽しめるとあって、朔太郎ファンや本好きの貴重な居場所となった。

「月に開く」のカウンター

▲店内は朔太郎全集をはじめ、様々なジャンルの本があった

店は2019年11月、常連だった女性が2代目店主となって引き継いだ。コロナ禍で営業の自粛や短縮を余儀なくされたが、根強いファンに支えられた。

店主が体調を崩し、今年3月から休業が続いた。復調するまでしばらく時間がかかる見通しとなったことから閉店を決意。店主はSNSで顧客に対し、「ここまで継続できたのはお客さまのおかげです。どこか暗い影が差す昨今、当店にあまたの素敵な時間を費やしてくださったことを心より感謝申し上げます」と伝えている。

9月中は店頭に蔵書を並べ、自由に持っていってもらっている。

▲思い出の本を持ち帰ってもらっている

閉店惜しみ、復活求める声も

閉店の知らせに常連は店主の体調を思いやりながら寂しさを隠せない。3年前に都内からUターンし近くのマンションに住んでいる70代の男性は「散歩がてら店に行き、ハイボールを飲みながら本を読むのが最高の楽しみだった」と肩を落としている。

浅からぬ縁のある萩原朔美さんも閉店に心を痛め、「クラウドファンディングで資金を募るなどして、店を継続できないものだろうか」と話している。