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朔太郎の詩 刺繍で語る
前橋文学館で18編の作品公開

2023.09.23

朔太郎の詩 刺繍で語る
前橋文学館で18編の作品公開

萩原朔太郎の詩をモチーフに立体的な刺繍で創作した18作品を公開する「朔太郎を刺繍す」が9月23日、前橋文学館で始まった。作者のティム・サトミさんから全作品が寄贈されたのを受け、新収蔵資料展として企画。『青猫』など18篇が刺繍の概念を超えたアートとなって並んでいる。12月24日まで。

作品寄贈のティムさんに感謝状

ティムさんは公開初日に前橋文学館を訪れ、萩原朔美館長から感謝状を贈られた。74歳の誕生日にあたり、「神様の贈り物。収蔵していただき、感謝しかない」と感激していた。

▲感謝状を贈られ、笑顔を見せるティムさん(左)

萩原館長から「詩と作品を並べると、作品は小さく見えるが、ティムさんの刺繍は激しく、時には詩のイメージが負けてしまう」と絶賛されると、「朔太郎の詩が大好き。若い人が詩に触れる誘発の糧になれればうれしい」とお礼の言葉を述べた。

朔太郎シリーズの新作については「衝動的に挑戦してみたい」と笑いながら意欲をみせた。

「空想の怪獣」に圧倒される

ティムさんが地域や年代を越えて集めた古布、木材、写真、ビーズ、毛などの素材を組み合わせ、丁寧な手仕事で生み出した作品は、自ら「空想の怪獣」と表現するように創造力に満ちて圧倒的な印象を与える。

作品はモチーフとした朔太郎の詩の自筆原稿や詩集とともに展示され、詩をどう解釈し創造したのかを想像できる。

▲「ばくてりやの世界」(右)と「春の実体」

『ばくてりやの世界』は315㌢×94㌢の超大作。極薄の絹を若竹色に染め、インド製の古布やラメ糸などを刺繍し、朔太郎が「ばくてりやがおよいでゐる」と詩にしたバクテリアを表現している。

▲「するどき青きもの」を表現した「竹」

朔太郎シリーズの第1号として、2017年に初めて制作した『竹』は竹模様の帯地で表装している。

 

▲「火」。古襦袢の裂き織りとベルベット地の赤いリボンが炎のよう

ティム・サトミ 1949年、岐阜県生まれ。京都府在修。文化服装学院卒業後、京都、大阪、東京でアトリエを開き、刺繍の指導にあたる。前橋文学館では「詩集『月に吠える』100年記念展」(2017年)、「サクタロウをアートする」(2018年)で作品を展示している。

「朔太郎を刺繍す」

会場 前橋文学館(前橋市千代田町3-12-10)
2階企画展示室
会期 9月23日~12月24日(水曜日は休館)
時間 9時~17時
観覧料 一般500円(高校生以下、障害者手帳のある人と介護者1人は無料)