interview
聞きたい
【聞きたい山井太会長1▶︎】赤城山×スノーピーク
世界とつながるコミュニティーを
2022.07.25
手つかずの自然が残り、観光地として高いポテンシャルを有する赤城山。オートキャンプのパイオニアとして、日本のアウドアシーンを改革してきたスノーピーク。両者が手を組んだ。目指すは世界中から、ここを愛する人が集まってくる「AKAGIYAMA」。全国の地方創生に取り組んできたスノーピークの山井太会長にインタビューした。
スマートシティの「奥座敷」
―「名月赤城山」と謡われ、全国的に知名度の高い名山です。どんな印象を持っていますか。
「手つかずの自然が豊かで、標高が想像していた以上に高かった。都心からのアクセスも抜群にいいですね。安らぎ、憩い、癒しといった人間に大事な要素を強く持っている地域だと思います。実際に足を運んでみて、アウトドアも盛んなことを知りました。赤城山が前橋市にあることも(笑)」
―年間数十日、キャンプされているそうですが、赤城山でキャンプをした経験はありますか。
「ありません。残念ながら現状は僕がキャンプをしたいというキャンプ場ではありませんから。 赤城山もそうでしょうが、自治体が開発したキャンプ場は昭和30、40年代にできた。いまのキャンプのスタイルが定着したのは1980年代からであまりにも乖離がある。非常に狭かったり、テントしか張れなかったりとか。トレッキングの人が休むためにはいいかもしれないが、オートキャンプには向きません」
―赤城山の観光振興をめぐり、群馬県は公募型のプロポーザルを実施し、子会社である「スノーピーク地方創生コンサルティング」が選ばれました。
「本社は新潟県三条市にあります。三国峠を越えてお隣の群馬県は大事な地域です。創業者である父はロッククライマーで、頻繁に谷川岳の岸壁を登っていた。そんな縁もあります。
前橋は民間による市街地の活性化や市のスマートシティ構想で、民間と行政がうまくつながっている。友人である田中仁さんからも『群馬でやるなら赤城山で』と強いお誘いをいただきました(笑)。
前橋市の構想に自然というパーツが加わることで奥行きが出ます。スマートシティ構想も都市部でやるのと、大自然を控えているところでやるのでは随分と違う。赤城という奥座敷を控えています。標高1500㍍という圧倒的なスケール感があり手つかずの自然が残っている県庁所在地はそうそうありません」
高いポテンシャルに磨きを
―観光客は最盛期の年間100万人から半減しました。群馬県の調査で滞在時間が短く、消費金額も少ないことが分かりました。
「アクティビティーは冬季のワカサギ釣りやトレッキングが中心でしょうか。我々が関与することによって滞在時間を延ばすことはできる。赤城山が持っている本来のポテンシャルにふさわしい磨きをしたい。うまくいっている部分は変える必要はないので。ただ、現状はポテンシャルが高いのにメジャーになっていませんね。地元の人の思い入れにふさわしい、もしくはいい意味で裏切るような磨きをしたいですね」
―基本的な進め方は。
「地元の人と都心の人、海外を含めて赤城山を愛する人同士のコミュニティーができれば、世界中から人が集まる場所になります。スノーピークはコミュニティーを作るのを得意とするブランドです。地元の人と前橋の才能のある人、赤城山のファンになる人と一緒になって魅力を掘り起こす一翼を担えればいいと考えています」
やまい・とおる
1959年12月、新潟県三条市生まれ。明治大商学部卒。外資系商社を経て父が創業した登山用品販売のヤマコウに入社する。96年に社長に就任、オートキャンプに力を入れ、地元・燕三条の職人技に裏打ちされたハイエンドで革新的なアウトドアグッズを開発している。2020年3月。還暦を機に社長を娘の梨沙氏とし、自らは会長となった。
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