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聞きたい

【聞きたい山井太会長2▶︎】赤城山×スノーピーク
キーワードは「キャンプと野遊び」

2022.07.26

【聞きたい山井太会長2▶︎】赤城山×スノーピーク
キーワードは「キャンプと野遊び」

赤城山の新たな開拓の第一歩は地元の人と都心の人、さらには海外を含めて、ここを愛する人のコミュニティーを創ることだと指摘するスノーピークの山井太会長。そもそも、スノーピークってどんな会社なのだろう。全国で地方創生を展開しているが、どんな手法なのだろうか。

「デザインの力」を信じる

―ハイエンドなアウトドアグッズで人気を集めています。

「現在のキャンプのスタイルそのものを作り上げた会社です。まったくない状態からこれまでにないものを始める『ゼロイチ』のマインドで、新しい挑戦を始める。『デザインマインドカンパニー』です。

スノーピークというとアウトドア用品やキャンプ用品の会社にみえますが、それは間違いではありませんけど、実は主な生業はデザインです。プロダクトデザイン、ウェブデザイン、アパレルデザイン。建築以外はすべてデザインを手掛けている。『キャンプの力とデザインの力』を信じている会社で、我々しかできないやり方で事業に取り組んでいます」

―ブランドの特長は?

「僕らの1番コアなバリューというのは自然に対する情緒感。自然が美しいと思える力です。『ここの自然を活かして、もっと美しくしたいよね』という考えですね。

例えば、高知県に仁淀川という日本一美しいとされる川があって、川のほとりに我々のデザインでキャンプフィールドを作りました。地元の人からは『施設ができてからの方が美しくなった』と褒めていただきました。できる前はだれも見向きもしなかった。施設ができ、こんなに美しい場所だと初めて知ったと。

地元の人がビフォーアフターを一番よく分かる。人工物を造るわけで、景観に配慮して、自然が一番美しく感じられるようにしました。仁淀川は天然の魚が獲れ、ウナギもアユもうまいんですよ」

―地方創生の第1号は地元ですか。

「20代後半から青年団体、JCとかYEGとかで活動していて、燕三条の街づくりを友人たちと一緒にやってきました。スノーピークの本社は15万坪の広大な敷地にあり、直営のオートキャンプ場を併設しています。今年5月には温浴施設を中心とした複合型リゾートとなりました。

都市部でも地方創生に関与していますが、もともと得意はアウトドアなので自然豊かなところの方が関与しやすい。「キャンプと野遊び」をキーワードにして、地域を活性化させ、豊かにして、人がたくさん集まれるようにする。各地で地元の人とリレーションを構築して展開しています」

―これまでに100以上の事例があります。

「そうですね。地方創生をやっていて、利益を上げようとする発想はないので。企業としての社会的使命の中でやっている。我々が関与してよくなればいい。まあ、赤字にはできないが、トントンになれば。こんなこと言うと株主さんに怒られちゃうかな(笑)

唯一無二というか、地方創生は横展開ができない。地域には特有の文化なり、歴史的な背景があり、住んでいる人もリソースも違うので。キャンプの力とデザインの力を使い、地元の人と協力して、オーダーメイドの地方創生に取り組んでいる。一個一個の経験値が積み重なり、磨きがかかっていると思います」

やまい・とおる

1959年12月、新潟県三条市生まれ。明治大商学部卒。外資系商社を経て父が創業した登山用品販売のヤマコウに入社する。96年に社長に就任、オートキャンプに力を入れ、地元・燕三条の職人技に裏打ちされたハイエンドで革新的なアウトドアグッズを開発している。2020年3月。還暦を機に社長を娘の梨沙氏とし、自らは会長となった。