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聞きたい

【聞きたい飯塚花笑監督2▶︎】
友達替わりだった映画に没頭

2022.05.21

【聞きたい飯塚花笑監督2▶︎】
友達替わりだった映画に没頭

自身のセクシュアリティーに悩み、苦しんでいた思春期。飯塚花笑監督を救ってくれたのは映画だった。繰り返し映画を観て、魅力に引き込まれていった。

言葉にできないことが表現できる

―初めて観た映画は?

「たぶん『ドラえもん』でしょう(笑)。映画監督になるきっかけとなったのは『もののけ姫』。小学2年生のときに観て、言葉にならなかった。映画を作りたいと、このとき思った。僕自身、口ベタというかコミュニケーションに難のある子供で、言葉で表現するのがもどかしかった。でも、言葉と言葉の隙間にあって、言葉で表現できないことが、映像では共有、共感できることを知って感動した」

―中学生時代は悩み、苦しんでいた。

「自分自身のセクシャリティーや友人との関係で、1人で悶々として、殻に閉じこもっていた。早く卒業して、映画監督になるんだとばかり考えていた。心の支えとなったのが映画。映画を観ることで、日常の苦しみを全部忘れられた。映画が友達替わり。癒しの時間になっていた」

―高校に入り、変化があったようです。

「高校は楽しかった。芸術コースだったので、クラスの中に変わった人、自分と似た人が多かった。好きな映画の話とか、美術の話を思う存分することができた。それまで、いじめられていた子も多くて、自分のことを『変』とは言わず、個性の一つとして受け止めてくれた。ものすごく、居心地がよかった」

自分の作風、守り続けたい

―大学在学中に制作した『僕らの未来』で国内外から評価されました。トランスジェンダーである自身の経験を基にしました。

「観てもらう人に伝えたい思いをストーリーに作り上げる。言葉が違っても共感してもらえる。これが映画の魅力。僕の場合、自分の経験からオリジナルの脚本を書く。恐ろしくエネルギーがいるけど、自分の作風は守り続けていきたい」

―悩んでいる若者にエールを。

「自分のセクシャリティーや友人関係に悩んでいたとき、心の支えとなってくれたのが映画だった。いまの悪い状況を打破しようと、現実に向き合うことも大事だと思うが、時には現実から逃避してもいい。悩んでいる中、高校生がいたら、現実を忘れさせてくれる“友達”を探してほしい。僕は映画に救われた。自分の居場所をみつけてほしい」

いいづか・かしょう

19901月、前橋市生まれ。木瀬中-高崎経済大附属高-東北芸術工科大デザイン工学部映像学科卒。『僕らの未来』は、ぴあフィルムフェスティバルで審査員特別賞を受賞、海外からも高い評価を得た。今年1月、初の劇場公開映画となる『フタリノセカイ』を公開した。東京と群馬の2拠点で映画製作にあたっている。