interview
聞きたい
【聞きたい映画監督 清水崇×俳優 手島実優2▶︎】
「ホラー映画は苦手だった」 オーディション100回落ちた
2022.05.10
「呪怨」シリーズで知られる「ホラー映画の巨匠」清水崇監督。恋愛映画に立て続けに出演し存在感を発揮している俳優、手島実優さん。隣町出身の2人は共通点を持ち、互いにリスペクトする。対談の最後に「me bu ku」編集室がお願いしたオファーは何か―。
「E.T.」で映画に目覚める
手島 実は私の実家は監督の実家の隣町です。監督のことは小学校の時、母親が「ここが『呪怨』の清水監督の家よ」と教えてくれて。
清水 何で知ってたんだろ。
手島 「呪怨」の大きな看板が出てましたので。
清水 あ、親父がポスター飾って出してくれてたんだ。
手島 友達の家で「怖い映画を観る会」というのがあって、みんなで「呪怨」を観ました。もう、怖くて怖くて。トラウマになっちゃいましたね。だから、当時は子供でしたし、ご近所さんでもあり、自分も俳優を目指すなんて思っていなかったので、監督のことは「ホラー映画の巨匠」というより、「怖い映画を作るおじさん」と認識していました(笑)。
清水 僕も実はホラー映画は苦手だった。というか、怖い話に興味はあったけど、なぜ映画でわざわざ見るの?って。生まれて初めての映画館は祖父が連れていってくれたんだけど、真っ暗で泣き出して…。何を見ようとしてたのかも覚えていない。
映画に目覚めたのは10歳の時に観た「E.T.」。あの時も怖い宇宙人の映画だと思って、ドキドキしていたんだけど…。主人公が同じ年ですっかり共感してしまい、感動しました。で、パンフレット見たら、映画に出ていない髭のおじさんの写真があった。そう、スピルバーグです。このころからだんだん、映画に傾倒していきましたね。
―手島さんはいつから芝居に興味を持ったのでしょう。
手島 スイミングにフラダンス、算盤といろいろやってまして。小学4年生の時、スイミングをやめる代わりに演技のワークショップに通うようになりました。秦秀明さんという素晴らしい先生が都内から来て、指導していただきました。
ワークショップは子供向けではなく、年齢はいろいろ。私が最年少でしたが、楽しかった。秦先生に「俳優をやる?」って誘われ、片っ端からオーディションを受けました。中学2年まで100回くらい、すべて落とされましたけど。
清水 すごい。根性あるね。
メイクの一言に救われる
手島 中学2年の時、主演候補2人の中に残ったのですが、最終オーディションを目前に背中の手術を受けることになり、泣く泣く辞退しました。背中がS字に曲がる「特発性脊椎側彎(そくわん)症」です。矯正手術自体は成功したのですが、合併症を起こしてしまいました。
リハビリして歩けるようになりましたが、いまも右半身に麻痺が残っていて、できない動きもあります。手術後数年間は自分が世界で一番不幸な人間だとふて腐れていました。
高校に入り、まち映画「グリモン」のオーディションに初めて受かってヒロインを演じました。現場の大人、俳優以外の技術スタッフたちが一生懸命仕事していました。「みんなそれぞれ事情を抱えながら、折り合いを付けて仕事をしている。上手に調整することも自分の責任だよ」と言われ目が覚めました。
清水 それを言ったの誰?
手島 メイクさんです。
清水 親とか先生の言葉だったら素直に聞けなかったかもね。
手島 はい、素直に耳に入りましたね。それで、「赤色彗星倶楽部」「カランコエの花」のオーディションを受けました。
清水 「カランコエの花」はいま観てもいい映画だね。あの作品はLGBTがいまのように語られる前だったはずだけど、感動した。最近の、LGBTのテーマを表面的に撫でた薄っぺらなのとは違う。出演者もよかったし、演出もうまかったな。1時間くらいでしたっけ。短い時間でよくぞあそこまで。
手島 39分でした。自主制作で始まり、ロングラン上映になりました。国内の映画祭でも評価していただきました。前橋でも上映していただき、舞台挨拶をできたのがうれしかったです。
しみず・たかし
1972年7月、前橋市生まれ。若宮小―第四中-中央高-近畿大演劇専攻中退。99年、Vシネマ「呪怨」が話題に。劇場版を経て、2004年、ハリウッドリメイク版が日本人初の全米1位。近作に「ホムンクルス」や「犬鳴村」、「樹海村」、「牛首村」の村シリーズ3部作などがある。
てしま・みゆう
1997 年 10 ⽉、前橋市⽣まれ。勢多農⾼卒。⾼校時代に伊勢崎市を舞台にしたまち映画「グリモン」で映画デビュー。2022 年は前橋市出⾝の飯塚花笑監督の「フタリノセカイ」をはじめ、「猫は逃げた」、「階段の先には踊り場がある」で主要キャストを務めた。
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