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公開目前『ブルーボーイ事件』
飯塚花笑監督とおうえん隊 映画界への静かな“革命”

2025.11.08

公開目前『ブルーボーイ事件』
飯塚花笑監督とおうえん隊 映画界への静かな“革命”

 1965年に実際に起きた「性別適合手術」をめぐる裁判をもとにした映画『ブルーボーイ事件』が、11月14日から全国公開される。撮影の8割を前橋市内で行い、東京国際映画祭ガラセレクション部門にも選出された注目作だ。7日、前橋市役所で開かれた記者会見には、監督の飯塚花笑さんと「ブルーボーイ事件おうえん隊」代表の堀込多津子さんが出席。公開を前に、監督とおうえん隊が“映画を育てる”決意を明かした。

劇場をブルーに染めよう

▲ブルーボーイ事件おうえん隊のマーク

 「このおうえん隊は全くのボランティアですが、飯塚監督のもとでお芝居のレッスンを受けている仲間たちを中心に結成しました。その多くが映画にも出演しています。私も出ていますので、ぜひ探してみてくださいね」。堀込さんが笑顔で語る。

▲おうえん隊代表の堀込さん

 おうえん隊は11月12日から、アクエル前橋TSUTAYA書店、本屋 水紋、前橋市役所の3カ所で撮影の舞台裏を写した写真展を開催する。それぞれ展示内容が異なり、「3カ所すべて巡ってもらえたら」と呼びかけた。  

 16日には、前橋シネマハウスでの上映後に飯塚監督とトランスジェンダー女優・真田怜臣さんが参加するロケ地ツアーと、水門でのトークイベントも予定されている。

▲中央通りの「本屋水紋」などでパネル展

 「特に14~16日の3日間が大事です。この映画を育てる力になります。青い服や小物を身につけて“劇場をブルーに染めましょう”。それが応援の合図です」と堀込さん。胸のロゴ入りTシャツを誇らしげに見せた。

当事者が演じる意味

 飯塚監督は冒頭、「社会派ではあるけれど、エンターテインメントとしても楽しめる作品です」と語った。物語の軸は、性別適合手術の合法性を問う法廷劇だ。 

 「舞台は1965年。一昔前の話なんじゃないかと思われるかもしれませんが、当時の議論は今と同じ。きっとこの映画を見終えた後、“今の時代はどうなのか”を考えるきっかけになると思います」と述べた。

▲記者会見で想いを伝える飯塚監督

 最大の特徴は、当事者キャスティングだ。  

 性の多様性を描く本作では、実際にトランスジェンダーの人たちが主要な役を担っている。  

 「非当事者では想像し得ない領域があります。セリフに書かれていない重みが加わり、作品の質がまったく違うものになる」と飯塚監督。  

 さらに「これほど大規模に当事者が出演する映画は日本で初めて。必ず日本映画史の1ページをめくる作品になると思います」と力を込めた。

▲トランスジェンダーや性的少数者が多数出演

昭和の街並みにいまを重ねて

 撮影の8割は前橋市内で行われた。

 敷島の水道局を警察署に、宮城公民館を火葬場に見立て、県民会館などさまざまな施設を使い、1965年の世界観を再現した。 「昭和のレトロなものと新しいものが調和して残っている。古いものがただ朽ちているのではなく、きれいに保存されている。ロケ地としても、街としても素晴らしい」と飯塚監督は話す。

 撮影を通じて、前橋に暮らす性的少数者との出会いもあった。 「若い世代だけでなく、昭和を知る方も多くいらっしゃいました。私自身も性的少数者ですが、昭和の時代を生きてきた方々が、今もこの街で暮らしている。そのことに驚きました」

▲群馬県民会館は、地方裁判所の外観やロビーなどに使われた

 映画は東宝系の劇場を中心に全国約80館で公開され、メイン館はTOHOシネマズ新宿。今後は100館規模への拡大が見込まれる。

 飯塚監督は「たくさん入っていただけると上映が伸びて、“国宝”みたいになれるかも」と笑いを誘い、「この映画を世界中の人に見てもらえるようにしたい」と締めくくった。

▲弁護士役で錦戸亮さんが出演

映画『ブルーボーイ事件』 11月14日全国公開(TOHOシネマズ新宿ほか全国80館)
※前橋シネマハウスは11月15日から、シネマテーク高崎は12月5日から上映。