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【萩原朔美の前橋航海日誌vol.13】「橋から物語が生まれる」
2022.07.11
10年後の今日、またこの場所で会おう。
なんていう約束は、橋の上がいい。街角じゃあ様相が一変する可能性があるし、町名だって変わるかもしれない。映画にも沢山登場するように、橋は出逢いと別れの一番美しい背景なのだ。
前橋は橋の街だ。大小さまざまなかたちの橋が二つの場所を繋いでいる。
思い出した。イタリアには、レストランが橋にあった。いっそ、前橋の図書館が橋だったらいい。駅が橋だったらいい。市役所の中に橋が掛かっていたらいい。市民ホールが橋だったらいい。郵便局が橋だったらいい。美術館や文学館が橋だったらいい。スーパーが橋だったらいい。デパートが橋だったらいい。ホテルが橋だったらいい。
前橋と言う名の大きな橋は、人と人、文化と文化、国と国とのあいだに橋を夢想する出逢いの街なのだ。
Sakumi Hagiwara
萩原朔美(はぎわら・さくみ)
1946年11月、東京都生まれ。寺山修司が主宰した「天井桟敷」の旗揚げ公演で初舞台を踏む。俳優の傍ら、演出を担当し映像制作も始める。版画や写真、雑誌編集とマルチに才能を発揮する。昨年、世田谷美術館に版画、オブジェ、写真のすべてが収蔵された。著書多数。現在、多摩美術大学名誉教授。2016年4月から前橋文学館館長。2022年4月から、金沢美術工芸大客員教授、アーツ前橋アドバイザー。
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