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【萩原朔美の前橋航海日誌Vol.48】
「優しさ」お持ち帰り
2025.08.08
民家や店舗の前に、さりげなく置かれた段ボール。よく見ると、
「ご自由にお持ち帰りください」
と書いてある。
いいなあ、この優しさ。自由さ。相互扶助感。循環感。モノを大事にする感じ。善意感。フレンドリー感。開放感。明るさ。
この「ご自由にお持ち帰りください」があるかないかで、街の成熟度が測れるかもしれない。
前橋は、あちらこちらでこの「ご自由に」を見かける。街で見かける文字と言ったら、「ひったくり注意」「空き巣警戒」「不審者見かけたら通報」ばかりだったから、初めて見た時は、楽しくなって、なにか持ち帰るものはないか、箱の中を探してしまった。
いつまでも、この「ご自由に」が現れる自由な佇まいの街であり続けで欲しい。訪れた人はみんなそう思ったに違いない。
前橋は、
「あなたの優しさをご自由にお持ち帰りください」
の街なのである。
Sakumi Hagiwara
萩原朔美(はぎわら・さくみ)
1946年11月、東京都生まれ。寺山修司が主宰した「天井桟敷」の旗揚げ公演で初舞台を踏む。俳優の傍ら、演出を担当し映像制作も始める。版画や写真、雑誌編集とマルチに才能を発揮。世田谷美術館に版画、オブジェ、写真のすべてが収蔵されている。著書多数。多摩美術大学名誉教授。2016年4月から前橋文学館館長(現在は特別館長)。2022年4月から金沢美術工芸大客員教授(現在は客員名誉教授)、2023年7月から前橋市文化活動戦略顧問。


