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【萩原朔美の前橋航海日誌Vol.39】「セリフ覚え ああ苦行」
2024.11.12
今年は前橋で4本の芝居に出た。
一つ目は、敷島公園にテントを貼った劇団どくんご。キッカケの合図で、いきなりマイク持った白髪の男が出現したんで、観客は「なんですか、この人」という感じだった。(笑)何をやってもいいという事だったので、50年ぐらい前に私が演出した寺山修司作「時代はサーカスの象に乗って」の中の強姦魔のモノローグをやった。しかし、客席を見たら親子連れがかなりいて、まずいなと思ったけれど、それしかテキスト用意していない。ごめんなさい、でした(笑)。
そして、毎年夏に文学館で上演している「イエスタディ」。今年は私の役が代わったので新鮮な気持ちで台本と向き合う事が出来た。リーディングだから役が変更になっても、台本は手に持っている。慌てる事はない。
もう一つは、朔太郎忌の「吾子よ」。その再演の劇団マルクシアターの公演。朔太郎忌はリーディングだから台本を持って読めばいいけれど、再演は、芝居なんでセリフ覚えなければならない。これが苦行だ。(笑)なんでこんなに頭に入らないのか。溜息をまといながら、散歩して覚えた。役者は、自分という殻から家出出来るから楽しくて仕方がない。その為にはセリフを覚えなくてはならない。そう簡単には、家出を許してはくれないのだ。
実は、懲りもせず、もう一本今月役者をやる。市民ホールでの16日17日の百花繚乱「スイング」だ。セリフを覚えたかどうか、観にきて下さい。役者になった時間だけ、ロールモデルは私自身だけだと思えるから、セリフが覚えられなくなるまで、続けるだろう。(笑)
Sakumi Hagiwara
萩原朔美(はぎわら・さくみ)
1946年11月、東京都生まれ。寺山修司が主宰した「天井桟敷」の旗揚げ公演で初舞台を踏む。俳優の傍ら、演出を担当し映像制作も始める。版画や写真、雑誌編集とマルチに才能を発揮。世田谷美術館に版画、オブジェ、写真のすべてが収蔵されている。著書多数。多摩美術大学名誉教授。2016年4月から前橋文学館館長(現在は特別館長)。2022年4月から金沢美術工芸大客員教授、2023年7月から前橋市文化活動戦略顧問。