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ベンチも看板も赤城色に 
赤城山の景観ガイドライン

2025.07.07

ベンチも看板も赤城色に 
赤城山の景観ガイドライン

 赤城山の自然景観を将来にわたり保つため、群馬県と前橋市は「赤城山景観ガイドライン」を5月に策定し、6月から運用を開始した。対象は県立赤城公園およびその周辺で、建築物や看板、ベンチなど人工物の外観や素材にルールを設け、調和ある空間づくりを進める。
(取材/阿部奈穂子)

色や高さ、素材で自然と調和

 「赤城山景観ガイドライン」策定の大きな契機となったのは、アウトドアブランド「スノーピーク」によるキャンプフィールドと周遊拠点施設「ランドステーション」整備計画。県がスノーピークを指定管理者に選定し、2026年春には旧赤城山オートキャンプ場跡地に新施設の開業が予定されている。多くの来訪者が見込まれる中で、無秩序な開発による景観破壊を防ぎ、自然と観光の調和を図る必要が高まっていた。

 ガイドラインは県と市が赤城山デザイン協議会を組織し、地元住民や環境団体と協力して策定。エリアを「賑わい」「回遊」「保全」の三つに分類し、それぞれに応じた景観形成の方針を定めた。

▲工事の進むキャンプフィールド

 たとえば建築物の色は、赤城山に見られる石や土、木の色をもとにした「地の色」が推奨されている。建物の高さは13㍍以内を目安とし、外壁材や屋根勾配、色調にも周囲との調和が求められる。湖畔や展望地に面する建物には、特に目立ちにくい素材や色を用いるよう求めている。

 看板やベンチ、柵も景観形成の対象であり、光沢の強い金属やコンクリートの使用は避け、自然素材を基調とする。不要物は可能な限り早期に撤去を促すなど、景観の阻害要因に対する配慮も盛り込まれている。

▲賑わう大沼湖畔。今後も一層、観光客が増えるだろう

大沼湖畔の廃墟の撤去を

 ガイドラインは法的拘束力を持たないが、県や市は「土地占用申請」や「前橋市景観条例に関する届出」を受け付ける際、ガイドラインのデザインコードに沿って建築を行うよう依頼する。今後の公園整備や民間事業にも幅広く活用される見通し。

 「大沼周辺には何年も営業をやっていない廃墟が多く存在する。第一歩としてそれらを撤去してほしい。鄙びた印象を拭い去り、美しい景観を保ちたい」。大沼湖畔でカフェを営む塩原勲さんはガイドライン策定を歓迎する。

▲塩原さん

 赤城山ではほかにも活性化の動きがある。鳥居峠に建つ旧サントリービアホールは、糸井重里さんが代表を務める「ほぼ日」が取得し、新たな施設としての再生を進めている。今秋にも開店する見込み。

 赤城山の魅力を引き出す多彩な試みが、着実に広がっている。

▲ほぼ日が営業する施設。工事が進んでいる