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絵本でほっこり落語の世界
野村たかあき原画展5日から
2025.07.05

温かな筆致に思わず笑みがこぼれる——。絵本作家、野村たかあきさんの没後初の絵本原画展が7月5日から前橋市のフリッツ・アートセンターで始まった。展示されるのは、柳家小三治さん監修の「らくご絵本」シリーズから『そこつ長屋』と『千両みかん』の全原画。7月5日から9月7日までの会期中、前後期に分けて初の全ページ公開となり、一冊ごとの世界観をじっくり味わえる。
木版画に色を付けて
野村さんの落語絵本原画展は、これまでに『しにがみさん』『ねこのさら』『しばはま』が行われてきた。今回、待ちに待った傑作2作の展示となる。
野村さんは2023年7月に逝去したが「いまだに受け止めきれず、『泣けない』というファンの声を聞きます。それなら、笑い飛ばそうということで今回の展示を企画しました」とフリッツ・アートセンター代表の小見純一さん。
浅草を舞台に、同じ長屋に暮らす粗忽者の二人が巻き起こす騒動を描いた『そこつ長屋』の原画は7月5日から8月3日まで。寝込んだ若旦那がどうしても食べたいと願う“真夏のみかん”をめぐって、番頭さんが東奔西走する『千両みかん』は8月9日から9月7日まで展示する。

▲『そこつ長屋』の原画
「落語と絵本は相性がいい」と小見さん。両者ともも説明しすぎず、「余白で何かを伝える」ところが共通点。そんな落語絵本をライフワークとしていこうと野村さんは考えていたという。
特筆すべきは登場人物の表情の豊かさ。「人柄までにじみ出る表情。これはAIでは決して表現することはできません」と小見さんは強調する。
図案を決め、木版画で彫り、色をつけて仕上げる。「効率ばかり重視する現代において、遠回りをすることの大切さ、そこに確かなものがあると野村さんは知っていたのでしょう」

▲群衆の一人ひとりの表情も豊か

▲会場では野村さんの本の販売も。絶版になった作品も揃う
野村さん愛蔵のイスで落語会
展示に合わせて開催される落語会にも注目したい。前橋市出身で、野村さんもかわいがっていた落語家、柳家小もんさんと立川がじらさんによる落語会が2日間にわたって開かれる。
落語会では野村さんが愛蔵していた木のイスに座って観覧できる。その数は約30客。
「野村さんが亡くなる3日前、突然、電話がかかってきたんです。『小見くんに預けていたあのイス、あげるからさ』と言われて。この落語会に使用するのを運命のように感じています」

▲左から立川がじらさん、柳家小もんさん
柳家小もん 対 立川がじら— 利根の松原の対決 —
⚫︎ 「そこつ長屋」
日時/ 7月27日(日) 15時30分 開演(開場 30分前)
⚫︎ 「千両みかん」
日時/8月24日(日) 15時30分 開演(開場 30分前)
会場/フリッツ・アートセンター
チケット/前売3,000円、当日3,500円(税込)。
のむら・たかあき

1949年、前橋市生まれ。『ないたあかおに』『かさじぞう』『風のじゅうたん』など数々の名作を手がけ、1983年、『ばあちゃんのえんがわ』で 第5回講談社絵本新人賞、1990年 、『おじいちゃんのまち』で第13回絵本にっぽん賞を受賞した。木彫・木版画作家としても高く評価された。2023年7月、逝去(享年73歳)。その絵本は今も、多くの人の心をあたため続けている。写真撮影/桑原高良さん
店舗情報
フリッツ・アートセンター
- お問合せはこちら
- 027-235-8989
住所 | 前橋市敷島町240-28 |
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営業時間 | 11時~18時 |
定休日 | 火曜 |
入場 | 無料 |