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日本の技を、歴史を見に行こう 小川屋創業150周年記念特別展示
2025.07.04

1875年創業の老舗呉服店、小川屋は7月4日から7日まで、150周年記念特別展示会を開く。京都を代表する織物の一流ブランド、創業230年の永井織物「永治屋清左衛門」に焦点を当てる。七代目、永井幸三郎さんの手掛けた復元品や所有する江戸時代の友禅小袖、代々受け継いできた千利休の掛軸など歴史的文化的価値の高いものを展示し、ブランドの反物や帯を販売する。小川屋社長、伊藤大介さんに見どころ、永井さん、永井織物常務の生末明さんに復元品について聞いた。
(取材/柁原妙子リポーター)
正に眼福
150周年記念展について、伊藤さんは「着物という伝統産業に携わる身として、みなさんに日本の文化に触れる機会を作り続けたいという思いから企画しました」と説明。「呉服屋に入るのは敷居が高いかもしれないが、勇気を奮ってでも来る価値のある展示だと自負している。気軽に『見に行きます』と電話予約をして、来てほしい」と来場を呼び掛ける。

▲ 「着物に携わるのは天職」と着物愛にあふれる伊藤さん
会場には千利休が蜂須賀小六に茶道具を贈った際の送り状、尾形光琳の可愛らしい肉筆絵、徳川幕府が鍋島藩主に賜った友禅の小袖など文化的な価値の高い品が並ぶ。

若草色の小袖は豊臣秀吉の正室ねね着用の復元品。京都市高台寺所蔵、国立京都博物館寄託の「立涌に桐紋様打敷(たてわくにきりもんよううちしき)」を、30年ほど前に京都博物館が調査をした際、永井織物も携わり復元した。
秀吉の死後、ねねは落飾、高台院となり高台寺を建立。永井さんは「当時の身分の高い人の慣わしで、ねねは自分の着ていた小袖を打敷(仏壇を飾る敷物)に仕立て直し、高台寺に寄贈した」と説明する。
白い糸で織られた立涌は上昇を意味する吉兆の意匠。家紋の桐の意匠が唐草模様のように配置され、ピンクや黄色、水色などの優しい色を多用して織られている。生末さんによると、「この小袖の染色は、全て当時と同じ藍、紅、苅安だけで行っている。植物染料なので、30年を経てかなり色褪せている」という。それでも前身頃の方に回って見ると褪色は後身頃ほどではない。美しい艶のある、見事な織りを間近に見ることができる。

▲小袖を復元した永井さん

七代目の情熱の成せるわざ
現代ではフォーマルとされる友禅染めは江戸中期に発明されたもので、元々着物の柄は織りで表現していた。絹は庶民には縁のない超高級品で、唐織は宮中、公家や大名家、神職、能装束などといった、身分の高い人のものだった。当時の蚕は明治期以降とは品種が異なること、繭玉を保管する際の熱のかけ方の違いなどから、糸の質は極上、細く軽量だった。
そんな歴史的背景を持つ織物、唐織。40年ほど前、永井さんは「友禅のような美術品を織物で作りたい」という夢を叶えるため研究を始め、やがて復元がライフワークに。その技術は博物館や寺などから依頼されるほど。
使う糸は、江戸時代の超高品質にも引けを取らないブラジルの日系企業「ブラタク社」の6Aシルク。繭の糸たった3本を撚り合わせたこの絹糸は、髪の毛より細く、かつ非常に丈夫で、現代の技術でも化学繊維でこの細さの糸は作れないという。軽くしなやかで光沢があり、繊細な色の表現がかなう。この糸は永井織物の他には誰もが知る世界的スーパーブランドしか使えない。

▲6Aのシルク糸
小川屋では永井織物の品物は今までも扱っていたが、今回のような大々的な展示会は初めて。永井織物としても、歴史的価値のある掛軸を展示するここまでの大きな規模のものは、東京を除く関東では初。

小川屋創業150周年記念 特別展示
七代永治屋清左衛門
場所 小川屋
(前橋市千代田町2-7-15)
日時 7月4日(金)~7日(月)
10時〜18時30分(最終日は17時)
入場 無料
※電話で要予約 0120-47-6002