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山懸良和と綴るファッション表現
アーツ前橋で4月27日から

2024.04.26

山懸良和と綴るファッション表現
アーツ前橋で4月27日から

神話などからインスピレーションを得た物語的コレクションで知られる山懸良和さんの美術館では初となる個展「リトゥンアフターワーズ ここに いても いい」が4月27日、アーツ前橋で始まる。アーツ前橋の全館を使った珍しいファッションの展覧会。写真家や民俗学者、哲学者とのトークセッションも開かれる。6月16日まで。

全館使ったストーリーテリング

サブタイトルは「山懸良和と綴るファッション表現のかすかな糸口」。自身のレーベル「リトゥンアフターワーズ」のこれまでの歩みを紹介するとともに、山懸が考える日本社会とファッション表現の「いま/ここ」を新作のインスタレーションで浮かび上がらせる。

個展は6章に分かれ、1階の第0章「バックヤード」はアーカイブ。楽屋裏をイメージし、17年に及ぶリトゥンアフターワーズの過去のコレクションからドローイング、絵画、書籍、布地やラフスケッチを並べている。こちらは無料で鑑賞できる。

▲1階から地下まで続く吊るし雛

▲階段の梁の上に展示された「七服神」

地下に下りると、第1章「神々、魔女、物の怪」から始まる。「神々はどういう装いをしていたか」「現代にいたらどんな装いをするか」との妄想から生まれた作品。2011年の東日本大震災をきっかけに制作した「七服神」は熊手を中心にお多福など縁起のいいものを集めた。水木しげるさんと同郷であり、妖怪や魔女も親近感を覚える作品に仕上げている。

分断された朝鮮半島を歌った「イムジン河」が流れる第2章は「集団と流行(はやり)」。折り鶴の衣装の周りに軍服をイメージした制服のマネキンを配置した作品は、自身が長崎県にルーツを持ち、平和や原爆を意識して制作したという。

▲制服姿は長崎・平和祈念像でのスケッチから

▲記者会見を表現した作品を解説する宮本チーフキュレーター

県内の空き家から家財道具

第3章は「孤立のトポス」。コロナ禍で東京を離れ、長崎・五島列島で制作した作品に加え、シルクで栄えた前橋市からインスピレーションを受けたという「ザ・バック」は軽トラやスケボーに乗ったタヌキが反物を背負ったユニークで神秘的な作品だ。

「変容する日常」と題した第4章では群馬県内の空き家や廃屋から集めた家財道具と過去のコレクションを組み合わせて、現代の日本社会を表象する「メゾン=家」を表現した。

▲何体ものタヌキが集まる

▲使い古した家財道具が並ぶ

個展のタイトル「ここに いても いい」を付けた第5章は子供の健康と幸福を願って飾られる「吊るし雛」に着想を得た最新作。1階から地下まで吊るされた6㍍超の大作。山懸さん自身、昨年、父親になって仕事と子育てに奔走する心情が素直に反映され、スマホで撮影した9カ月のわが子の映像も作品として公開している。

全章を見終えると、「追補 アフタースクール」として、山懸さんの教え子18人の作品を展示している。

トークは個展初日の4月27日(15時~17時)、山懸さんと担当キュレーター、宮本武典さんが展覧会ができるまでを解説するのを皮切りに、桐生市出身の写真家、石内都さんらと4回にわたって行う。

前橋からインスピレーション

山懸さんは個展のために何度も前橋市や県内各地を訪れ、作品の制作や展示の参考にした。4月26日に行われたプレス向けの内覧会では「十数年の活動を見せられる初の機会であり、1週間前から滞在して特別な思いで制作に取り組んだ。前橋はシルク産業の重要な地として認識している。ここでインスピレーションを得た作品もある」と鑑賞を呼び掛けている。

山懸良和

やまがた・よしかず 1980年、鳥取県生まれ。セントラル・セント・マーチンズ美術大卒。2007年にファッションレーベル「writtenafterwards(リトゥンアフターワーズ)」を設立、「装うことの愛おしさを伝える」をコンセプトに、既成概念にとらわれないファッション表現を試みる。デザイナーの傍ら、ファッション表現の実験の場として「coconohacco(ここのがっこう)」を主宰、多くのデザイナーやアーティストを輩出する。2021年、毎日ファッション大賞 鯨岡阿美子賞を受賞する。

リトゥンアフターワーズ ここに いても いい

お問合せはこちら
027-230-1144
住所 前橋市千代田町5-1-16
・会期 4月26日~6月16日(水曜休館)
・開館 10時~18時
・主催 アーツ前橋
・入館料 一般800円、学生・65歳以上・10人以上の団体600円、高校生以下・障がい者手帳持参者と介助者1人無料