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連載【匠の手】vol.1  
「寂金」で金や銀の奥ゆかしさを
陶芸家・閑野淳さん

2024.02.18

連載【匠の手】vol.1   
「寂金」で金や銀の奥ゆかしさを
陶芸家・閑野淳さん

何もないところからアイデアと技術で唯一無二を生み出す、物づくりの匠たち。前橋にゆかりの匠を紹介するシリーズ「匠の手」。第一回は「寂金」と「南蛮焼締」に力を入れる陶芸家、閑野淳さんを紹介する。
(取材/阿部奈穂子、撮影/七五三木智子)

料理人と共創する

「昔から、鉄の錆びる感じに美しさを感じていました」。メーンで取り組んでいるシリーズを「寂金(さびがね)」と名付ける。金属色の強い釉薬をかけ、少ない空気で不完全燃焼させながら焼く。

きらびやかではない奥ゆかしい金や銀。色ムラも美しい。近年は高級フレンチやイタリアン、料亭に納品する機会が増えている。

▲料理が映える寂金の大皿

「一番初めに使ってくれたのは敷島町にあったイタリアン『ダル・クォーレ』の鈴木伸朋さん。器の話を始めると2時間は止まらなかった」と振り返る。たくさん注文を付けてもらい、自身も成長した。

「器は料理を盛って完成する」ことを、いまは亡き鈴木さんから学んだ。それからは作ったものをただ選んでもらうのではなく、料理人と話し合い、共創するようになった。

▲工房に立つ閑野さん

10年の回り道を経て

子供の頃から物作りが好きだった。専門学校では陶芸を専攻し、益子焼の窯元で修行した。しかし、「陶芸で食べていくのは難しいかも―。20代の自分はそう思ってしまったんです」

窯元を辞め、バックパッカーとして東南アジアを回ったり、介護の仕事に就いたり。10年間、自分探しの旅を続けた。回り道をしたが、「本当にやりたいのは陶芸だ」と原点に立ち戻ることができた。

現在は田口町の工房に籠り、朝から晩まで作品作りに明け暮れる。「本当に納得できるものは1年で1、2点。すぐに上達するわけじゃない。コツコツと積み上げていきたい」とひたむきだ。

▲型にはまりたくない、トゲトゲのシリーズも閑野さんの持ち味

「寂金」とともに力を入れているのは、東南アジアにルーツを持つ「南蛮焼締」。釉薬をかけずに、焼き締めるオレンジ黄色の器だ。低い温度で数日間かけて焼き上げる。「作陶のコンセプトは『普通であり、どこか普通でない』。それに南蛮焼締はピッタリはまりました」

これまでは仲間の陶芸家の窯を借りていたが、今年中には、赤城山麓に新しい工房と自分の蛇窯を構え、再出発を切る。

背が低く、丈が長いその姿が蛇に見えることから名付けられた蛇窯。「もちろん、自分で手作りします。大変だろうけれど、ワクワク感が勝っています」

▲温かみのある南蛮焼締台皿

かんの・あつし

1985年、前橋市生まれ。南橘中―前橋育英高―京都伝統工芸専門学校卒。益子焼の窯元で2年間勤務。10年間、陶芸と離れたのち、2016年、前橋市田口町に工房「デラシネファクトリー」創業。2024年、赤城山麓に移転予定。

ここで見られる・買える

デラシネファクトリー

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027-212-5250
住所 前橋市田口町107-1
工房
陶芸教室