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【聞きたい宮崎晃吉さん3▶︎】
文化都市・前橋を押し出そう

2022.11.07

【聞きたい宮崎晃吉さん3▶︎】
文化都市・前橋を押し出そう

リノベーションで蘇った白井屋ホテルの誕生から街の「潮目が変わった」と指摘する宮崎さん。コンパクトで、時間がゆっくり流れる街。若者やアーティストが気ままに過ごせる街。そんな街と繋がりを持ち、にぎわい創出に貢献したいと話してくれました。

レンガと緑化で一体感生まれる

―前橋市街地にも空き家や空き店舗が目立っています。これまでは壊して駐車場にするくらいでしたが、白井屋ホテルがリノベーションで蘇り、街のランドマークとなっています。

しののめ信用金庫のリノベを引き受けるにあたり、街中をいろいろ調査したんです。白井屋はアーツ前橋とともに「アートエリア」を構成する代表的な建物と位置付けています。馬場川沿いに緑の丘があり、既存の構造を残しながら、大胆な減築を行って内部に大きな空間を生み出しています。

白井屋で実現されたラフでありながら気品のある空間の実例は、今回のしののめ信金のリノベーションを進めるにあたっても影響がありました。通常の金融機関では認められないであろう仕様へのご決断をいただく一助になりました。

―馬場川通りは民間主導で改修されます。レンガが敷かれ、水辺を眺める椅子も置かれます。

レンガはいいですね。しののめ信金のビルにも上毛倉庫や旧安田銀行担保倉庫など、「糸の市(まち)」前橋の近代化を象徴する建築物と同じく、建物の内外に多くのレンガを敷き詰めました。

白井屋もそうですし、中央通りにあるイタリア料理のグラッサ、和菓子のなか又、海鮮丼のつじ半もレンガタイルを使っていますね。グリーン&リラックス構想で緑化を進めるのと同様、街づくりに一体感が生まれます。

―中心街に若者が進出してきました。こだわりのカフェが開店したり、変わった古着屋ができたり。

クラフトビールの店もできますね。前橋工科大や前橋国際大の学生が街中のシェアハウスに住み、街を楽しんでいるようです。自由に遊んでやろうといった楽しい気持ちが伝わります。

―よく、ご存知ですね。

高校生まで過ごし、実家もある地元ですから。思い入れはあります。いまも繋がっている友人もいます。この街の魅力はコンパクトでいて、時間がゆっくり流れていること。老舗の商店や洋食店が残ってくれているのはすごくうれしい。

それと、奇跡的なほど多くのアーティストが活動していて、彩りを添えている。文化都市的な側面を押し出したらいいんじゃないかな。

―街のにぎわい創出に一肌脱ぎませんか。

シャッター街だったのが、白井屋の誕生で潮目が変わった気がします。この街が好きな人、思い入れのある人が集まれる空間にできればいい。谷中で始めたリノベーションも、しののめ信金の事業も、人と人との「ご縁」があったからできたこと。前橋の方とも新しい縁が生まれ、私にできることは精一杯します。

みやざき・みつよし

1982年、前橋市生まれ。群馬大附属中―前橋高-東京藝大大学院修士課程修了。磯崎新アトリエ勤務を経て独立する。2013年に「HAGI STUDIO」を設立、東京・谷中を中心に空き家をリノベーションし、飲食、宿泊業を展開している。