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【体験ルポ】福島で前橋生まれの薪窯と出会う 
「HAGIフランス料理店」の炎の美食

2023.08.20

【体験ルポ】福島で前橋生まれの薪窯と出会う 
「HAGIフランス料理店」の炎の美食

フランス発祥のレストランガイド「ゴ・エ・ミヨ2023」で3トックを獲得した福島県いわき市の「HAGIフランス料理店」。食材は車で1~2時間の範囲で手に入る地元のもののみ。それを福島の木を使った薪焼きで調理するそう。「これは行って味わわねば」。前橋から車で高速を飛ばして約3時間、いわき市の小高い丘に建つ同店へ行ってきました。そこで、待ち受けていたのは……。(取材/阿部奈穂子)

週に一度、日帰りで前橋へ

薪が積み上げられた平屋建ての一軒家レストラン。店内はオープンキッチンで、客席は7~8人でいっぱいになる小さな、でも特別感のある空間です。

「いらっしゃいませ。予約の際、前橋からのお客様と伺い、楽しみにお待ちしておりました」

オーナーシェフの萩春朋さんとソムリエの奥様が出迎えてくれました。でも、なぜ前橋?

▲小高い丘の上にあります

▲オーナーシェフの萩さん

謎はすぐに解けました。キッチンに鎮座する高さ2㍍ほどの巨大な薪窯。「前橋の増田煉瓦さんにオーダーメードで作っていただいたんです。打合せや仕様を調整するため、毎週のように日帰りで前橋に通っていた時期があるんですよ」と萩さん。これは驚きました。シェフの右腕となる薪窯が前橋の製品だったなんて。

▲前橋市石倉町に本社を構える「増田煉瓦」が製造した薪グリル

福島の食材を福島の木で焼く

さあショータイムの始まりです。朝採りの野菜を使った冷菜2品が出たあとに、いまが旬、薪で焼いたホッキ貝が登場。ふっくらとした身に香ばしい木の香りをまとい、たまらない貝の甘さ…。これが薪焼きの威力か。

続く天然のジュンサイとウニの冷菜を食べていたら、シェフが炎と格闘を開始。日戻りのカツオをワラで包み、薪焼きしているのです。

厚く切られたカツオを塩でいただきます。身がツヤツヤで旨味がギュッ。いままで食べたカツオで一番美味しいかも。

▲この焼き色と身の赤色を見て

薪焼きの伊勢海老を、魚を丸ごと使ったソースでいただいたあとは、「ちよのす」という地場のナスを薪で真っ黒になるまで焼き、朝採りのシラスとともに。

次々と薪の威力を発揮した料理が出てきます。炎と対峙するシェフの集中力は半端ない。

薪で焼くと食材がみずみずしいんです。旨味が閉じ込められている感じ。

▲伊勢海老はプリップリ

▲黒い中からジューシーなナスの実が

メーンの肉料理は経産牛の薪焼きです。経産牛とは子どもを産んだ牛のこと。短期間で大きくなるよう穀物中心の飼料で育てられた牛とは違い、草を配合した健康的な飼料で長く大切に育てられた牛です。

石板を使い、じっくり薪焼きするシェフ。「うわ、美味しい」。思わず声が出るほど味が濃い。そしてお肉は柔らか。

「前の薪窯が古くなり、2年前に新調しました。その際、全国各地を探し回ったんです。増田煉瓦さんの窯を選んだのはノウハウがぎっしり詰まっているため。内部にはフランス産のレンガが使われ、食材に柔らかく熱が回ります」と萩シェフは言います。

▲「棚も絶妙な高さ」と萩シェフは絶大なる信頼を寄せる

全国100のレストランで活躍中

帰宅した翌日、増田煉瓦の代表取締役、増田晋一さんを訪ねました。「萩さんに行かれたんですね」と満面の笑顔。

同社は2000年、ピザ窯の製造を始め、2006年、「薪グリル」という名の薪窯を商品化したそうです。日本では炭火焼きが最高の調理法と思われていますが、フランスやイタリアでは薪火を熱源とした調理法が伝統的に存在します。

「炭火は乾いた熱、薪火は湿った熱。高温で焦げ目をつけずに焼くのは薪火でしかできません」と増田さんは言います。口中に旨味があふれ出すステーキや野菜焼きは、薪火が最も得意とするところだそう。

 

▲薪火について熱く語る増田さん

増田煉瓦の薪グリルはいま、全国100以上のレストランなどで使われているとのこと。中にはミシュランの星付きレストランも。

「群馬県内で導入してくださっているのは2店舗。地元、前橋はゼロ。新鮮な食材を薪火で調理しようという地元のお店があれば全面的に協力しますよ」と笑いながら話してくれました。

前橋に薪火料理のお店、できるといいですね。良い食材と良い窯の製造者がいるのですから…。あ、薪ももちろん前橋産で。

 

▲1917(大正6)年創業の増田煉瓦

店舗情報

増田煉瓦

お問合せはこちら
027-251-5824
住所 前橋市石倉町4-18-11