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昭和の焼き肉殿堂店「綾城」
愛された半世紀 歴史に幕

2023.12.14

昭和の焼き肉殿堂店「綾城」
愛された半世紀 歴史に幕

煙もくもくの店内はいつも満員御礼。美味しい焼肉と店主夫婦の笑顔があった—。昭和の焼き肉殿堂店「綾城」(高崎市岩押町)が11月末で閉店した。通称「オケラ街道」と呼ばれた旧高崎競馬場近くで暖簾を掲げて半世紀。89歳の店主が体調不良となり、惜しまれつつ店仕舞いした。

VIPが通う煙もくもくの店

「豪快にな、こう焼くんだよ」「焼き過ぎはダメよ」。白い割烹着を身に付け、白い帽子を頭に載せた青木秀弘さんが店内を回り、焼き方を指南してくれる。

上州牛をはじめ良質な牛肉、豚肉を安く、お腹いっぱい食べられる店とあって人気を集めた。お薦めはカルビ、ロース、タン、ホルモン、コブクロ、レバー、カシラと牛、豚相盛りの豪快な一皿だった。

▲カルビから内臓肉までてんこ盛り

▲焼き網を代えてくれる店主

お世辞にもきれいとは言えない超庶民的な店ながら、高崎駅近くにあるJR、JTの歴代トップやVIPがお忍びで通い詰めた。かつては宴会になるとうどんを打ち、これが隠れた人気メニューだった。

5年間無休、仰店グランプリ

2019年にテレビ放映された「ウマい!安い!面白い!全日本仰店グランプリ」では、80歳から5年間(1800日)、1日も店を休んでいないとして驚かれ、見事に初代グランプリに輝いた。

2021年2月に店を訪れた際は結婚60年、開店50年の記念の年だった。「女房とクイーンエリザベス号で世界一周するのが夢」と話し、結婚記念の写真まで見せてくれた。

▲結婚した時の写真を見せてくれた店主夫妻

競馬場跡地がGメッセとなり、高崎芸術劇場が誕生。辺りはすっかり再開発が進んだ。

「奥さんには洗い物はさせないよ」と愛妻の体を労わった青木さんだが、90歳を手前に自身の体が思うようにいかなくなった。借りていた店舗兼住宅の契約が年内で更新となることもあり閉店を決意。故郷の伊勢崎市で余生を送ることになった。

▲閉店を知らせる張り紙(右)が悲しい