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アツミレコード「今日でお別れ」
演歌の聖地、30年目に幕

2023.10.31

アツミレコード「今日でお別れ」
演歌の聖地、30年目に幕

全国的にも珍しい演歌専門のCD店「アツミレコード」(前橋市千代田町)が10月31 日に店を閉じる。1994(平成6)年に誕生した演歌ファンの聖地に、今日でお別れ。30年目の悲しい日となる。前橋から「レコード店」と名の付いた店がすべて消える。

電器店からレコード店へ

氷川きよしさん、水森かおりさん…。人気の演歌歌手のポスターや宣伝パネル、写真入りのサインが所狭しと並んでいる。CDに加え、カセットテープも扱う。演歌全盛の昭和の世界があった。

家電とレコードを扱っていた電器店だった家業を演歌専門のレコード店に変えたのは現在の店主、後藤暁さん、八重子さん夫婦。

大手の家電店とレコード店の進出により、中心街にあったレコード店が次々と店を閉める中、演歌専門とすることで岩盤のような強固な顧客をつかんだ。

▲お店を訪れた歌手、石原詢子さんを囲んで、後藤暁さん(写真右)と八重子さん(写真左)

▲パネルやポスターが並ぶ店内

ビールケースの上で熱唱

アイデアマンの店主は地元歌手のためにコンサートを企画したり、新人歌手のプロモーションに力を入れたりした。

店の前の銀座通りや中央通りを使った店頭キャンペーンは風物詩のようだった。まだ名の通っていない歌手が舞台代わりのビールケースの上に立って新曲を熱唱、手渡しでCDを販売した。

▲デビューした直後、来店し、歌を披露した氷川きよしさん

「氷川きよしが『箱根八里の半次郎』を歌うのを聴きました。この年に紅白歌合戦に初出場した」。閉店を知った常連の一人は往時を懐かしむ。

すでに大御所となっていた田端義夫さんや伍代夏子さんも歌ってくれた。「社長は島津亜矢さんが日本一だとかわいがっていた」と八重子さん。

▲島津さんのポスターや団扇

▲島津さんからは閉店を悲しむ手紙と胡蝶蘭が送られた

▲バタヤンも来店し、歌った

遠くからも来る常連に愛されてきたが、店主の体調がおもわしくないことから店仕舞いを決めた。

「いいお客さんに恵まれて、ここまで頑張ってこられた。お客さんのおかげです。閉店は寂しいけど、たくさんの思い出をいただきました。感謝しかありません」。店番を務めた八重子さんは30年を思い出し、言葉を詰まらせた。

▲店頭キャンペーンの際に使われた音響機器は店の奥に眠る

▲店頭で「牡丹雪」を歌う市川由紀乃さん

▲ずらりと並んだ演歌のCD

▲30年の歴史に幕を下ろす