interview

聞きたい

【聞きたいHUTTE HAYASHI CAFEオーナー  林智浩さん▶︎】赤城山未来予想図Ⅳ

2022.08.04

【聞きたいHUTTE HAYASHI CAFEオーナー  林智浩さん▶︎】赤城山未来予想図Ⅳ

「シャワー効果で山全体を元気に」

赤城山を象徴する観光スポット「大沼」。原生林に囲まれたカルデラ湖は四季を通して豊かな顔を見せる。眠りから覚めた春は山菜採り、涼やかな夏は自転車やランニング。登山は紅葉の秋、湖面が結氷する冬はワカサギ釣りを楽しめる。手つかずの自然を生かしつつ、体験型観光地として磨きをかけよう。湖畔の経営者たちが未来予想図を描く。

▲赤城山頂の未来を占いポーズを決める青木猛さん、塩原恭子さん、塩原勲さん、林智浩さん(左から)

ワーケーションに最高の立地

―林さんはもともと赤城山頂の人ではありませんね。なぜ、山頂に店を出したのですか。

心の底から赤城山が好きで、昨年7月に覚満淵近くにカフェを出しました。赤城山の一番いいところが山頂です。私は南麓の中腹で「とんとん広場」というレストランを経営しています。デパートと同じように上から下にお客さんが流れるシャワー効果があると思うんです。山頂に人を増やすことで、山全体が元気になればいいなと願っています。

―地元の人からは「こんなおしゃれな店はこれまでの山頂にはなかった」と歓迎されています。

山頂の人たちが頑張ってこられたことには敬意を表します。ボランティアで登山道を整備したり、ガイドをしたり。みなさんの頑張りがあって、現在そして未来があるわけです。歓迎して仲間に加えてもらい、光栄です。

―カフェの隣にはワーキングスペースができました。どんな使い方をするのですか。

コロナを契機にリモートによる仕事が増えています。ここなら仕事をしながら、自然に癒される。ランニングをしてきてもいいし、自転車に乗って大沼を1周してきてもいい。美味しい食べ物もあります。何より天然の涼しさが一番の贅沢です。夏場のワーケーションには最高の場所でしょう。

―赤城山には林さんのように新たに進出する人が出てきて、底は打った感がありますが、年間100万人が訪れた最盛期に比べると寂しい状況です。

バブル時代がピークですか。南麓の中腹もドイツ村など大型観光施設ができ、随分とにぎわいました。バブル期までの観光は女性誌が仕掛けていた感じでした。清里とか、安曇野とか。タレントショップができたり、どれも原宿化し、同じような観光地になってしまった。でも、流行物は廃り物。衰退するのは当然の結果でしたね。

ブランド力を生かして創生

―群馬県が県立赤城公園の活性化に向け、全国で地方創生事業を手掛けているスノーピークの子会社と連携する計画を進めていますね。

基本構想案が公表され、それに対するパブリックコメントを募集しましたが、相当な数が寄せられています。もちろん、反対論もありますが、それだけ、県民にとって赤城山は大事なシンボルであり、愛されている証拠でしょう。

―連携についてはどう思いますか。

絶大なブランド力、使わない手はありませんね。もちろん、地元の人たちが守り続けてきた手つかずの自然を守るのが前提になりますが。実は地元で暮らしている若い子は地元のことが好きではないんですよ。「何でこんな田舎に生まれたんだろう」と考えている。でも、赤城の自然に少し手を加えるだけでキラキラした存在になるんです。そんなことを知ってほしくて、6月にキャンプイベントを開きました。首都圏ナンバーの車がたくさんやってきました。ボランティアで参加した若い子にどう伝わったでしょうか。

―スノーピークがいい刺激になる?

赤城山には本当にいい空間がある。スノーピークのデザイン力と企画力を上手に利用すればいい。デザインは大事ですね。うちのカフェの椅子やテーブルもスノーピークの製品です。おしゃれで、自然にうまく溶け込む感じ。山にぴったりですね。互いにアイデアを出しながら、後はスピード感をもってやっていくしかないでしょう。

はやし・ともひろ

1976年12月生まれ。南橘中―渋川高―専修大。福豚の里とんとん広場、まえばし農学舎を経営。「赤城山のハム職人」を名乗る。