interview
聞きたい
前橋をアートの街に
塩原将志さん、故郷への思い語る
2026.11.02
世界で活躍する前橋市出身のアートディーラー、塩原将志さんが10月31日、まえばしガレリアで開かれたGLAYのTERUさんとのトークショーで、故郷への思いを語った。子どもの頃、にぎわっていた中心街の記憶を振り返りながら、アートを通じた街の再生や、芸術祭が市民の誇りになることへの期待を寄せた。
(取材/阿部奈穂子)
大都会だった前橋を再び
赤城山で生まれ育った塩原さんにとって、前橋の中心街は特別な場所だった。
山から下りてくると、映画館があり、駄菓子屋があり、百貨店も遊園地もあった。まえばしガレリアがある場所にも映画館があり、子どもの頃に訪れた記憶があるという。
「僕にとって、ここは大都会だったんですよ」
その後、海外でアートに関わる仕事をするようになった。パリやニューヨークなど世界の都市を見てきた塩原さんは、文化や芸術が人を引き付ける力を実感してきた。
▲前橋への思いを語る塩原さん
「故郷の前橋でも、アートを通じて何かできないか」
転機となったのは、2016年に策定された前橋のまちづくりビジョンだった。JINS創業者の田中仁さんが中心街に文化施設をつくる構想を示し、塩原さんも自分にできることを考え始めた。
現在は、まえばしガレリアにある「Gallery 2」の運営に携わり、国内外のアーティストの作品を紹介している。
しかし、故郷の中心街は子どもの頃とは大きく変わっていた。
「ちょっと寂しいかなと思ったこともあるんですけれども、この街がもう一度元気になってほしい」
いつまでも故郷は故郷。人々が帰ってきたいと思える街になってほしいと願っている。
▲まえばしガレリアの中庭でトークショーが行われた
芸術祭は街の誇りになるか
塩原さんが芸術祭の成功を測るうえで大切にしているのは、「シビックプライド」。市民が自分たちの街に抱く誇りや愛着だ。
世界的な芸術祭が開かれるベネチアでは、住民が過去の展覧会について語り合い、その記憶が街に積み重なっているという。
「本当にその街の人たちの誇りになるような」
一過性のイベントで終わらず、住民が芸術祭を語り継ぐ。そんな文化が根付くことを期待している。
▲塩原さんもギャラリーを構えるまえばしガレリア
若手アーティストの支援にも力を注ぐ。まえばしガレリアで開催中の合同展では、GLAYのTERUさんとの縁で知り合った函館出身の画家、藤倉朱里さんの作品を展示している。
塩原さんは藤倉さんの強い意志を評価し、大作の制作を依頼した。若い才能が国際芸術祭を通じて世界へ羽ばたくことを期待している。
▲芸術祭の成功はシビックプライドが生まれるかどうか
現在、前橋では第一回前橋国際芸術祭を12月20日まで開いている。2028年秋には前橋で第二回、函館ではTERUさんが構想する箱館国際芸術祭が開かれる予定だ。
塩原さんは、歴史ある街の再生という点で前橋と函館には共通するものがあると指摘。函館では地元の人たちがTERUさんとともにアートや音楽を楽しんでおり、その姿を前橋でも実現したいと考えている。
「アートが特別なものではなく、日常の一部になる街」。それが塩原さんの描く前橋の未来だ。
しおばら・まさし
1962年、前橋市富士見町の赤城山生まれ。アートディーラー、アートアドバイザー。アルペンスキーの五輪候補として活躍した後、美術の世界へ。1987年に日動画廊に入社し、ニューヨーク現地法人の代表を務める。2004年に「アート・オフィス・シオバラ」を設立。国内外の現代アート作品を扱い、個人や企業のコレクション形成を支援する。2023年から故郷の「まえばしガレリア」でギャラリーを共同運営している。
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