interview
聞きたい
【聞きたい 小林香菜選手▶4】
世界切符つかんだ大阪の激走
2025.05.08

市民ランナーから実業団入り。過去にいたのは谷川真理さんくらいだろうか。異色のランナー、小林香菜は本格的な指導を受け、才能を一気に開花させた。そして、今年1月。大阪女子国際マラソンで驚異の走りをみせた。
友人のお父さんの声援
――市民ランナー時代に一番苦労したことは?
練習の方法が果たして適切なのか、分かりませんでした。どこまでやればいいのか。1人でやるのはきつい。追い込めていないのか、不安でした。
――ぐんまマラソンの女子10㌔で2022、23年と連覇しました。圧倒的な走りでしたね。
ポイント練習の一環として出場しましたが、地元の大会で優勝できて、とてもうれしかったです。2年目は「勝たないとまずいな」とプレッシャーもありました。

▲ぐんまマラソン女子10㌔で連覇した小林選手=2023年11月・上毛新聞社提供
――大塚製薬陸上競技部に入り、急速に力を付けました。
河野匡監督、伊藤舞コーチから継続的に専門的な指導を受けることができました。ストレッチも念入りにするようになって大きな怪我もなく、よく食べよく寝ています(笑)。
――運命を変えることになる大阪国際女子マラソン。どんな目標を立てていたのですか。
世界陸上の参加標準記録(2時間23分30秒)を切ることでした。「切れれば自信になる」。「その先にあるロサンゼルス五輪を目指す1歩になればいい」。そんな感じで出場しました。
――15㌔過ぎの給水ポイントで前を行く海外ペースメーカーと接触し転倒しそうになりました。
給水で立ち止まっていて慌てて避けようとしましたが、ぶつかってしまいました。お腹とか痛かったけど、実はあの時点できつくなっていたので、かえって気持ちを切り替えられたかもしれません。
――中間点辺りから徐々に先頭集団から遅れるものの、驚異の追い上げをみせました。日本人2位になると…。
鈴木優花選手の背中が見えてきました。でも、パリ五輪で6位入賞した力のある選手なので、まず抜かせるとは思いませんでした。

▲日本人トップでゴールする小林選手=2025年1月
ラスト1㌔で沿道から「行けるよ。鈴木さんバテているから行けるよ」って声が掛かりました。実は声を掛けてくれたのは友人のお父さん。あれっ、それなら確かに行けるかも。と、とたんに元気が湧いてきました」
――ラスト800㍍。鈴木選手に並ぶと一気に前へ。素晴らしいスパートでした。
私はスピードがないので、トラック勝負になったらかなわないと思い、本能的に前へ出ました。100%力を出し切れました。
ゴールした瞬間は「日本人トップ⁉ もう信じられない。まぐれと思いたくないけど、思ってしまう」。そんな気持ちでした。
小林香菜(こばやし・かな)2001年、前橋市生まれ。前橋三中-早稲田大本庄高等学院-早稲田大法学部卒。大学では陸上サークルに所属、市民ランナーとして活躍する。2024年、大塚製薬陸上競技部に入部。防府読売マラソンで優勝する。




