interview
聞きたい
「本気でやれば勝てる」
田中仁さんが前橋で講演
2025.03.06

ジンズホールディングスCEOで前橋市のまちづくりに情熱的に取り組んでいる田中仁さんを迎えたGIS講演会が3月6日、前橋市内で開かれた。ジンズを一代でグローバル企業に育て上げた事業とシャッター街だった中心街を全国から注目されるまでに押し上げたまちづくりについて、「為せば成る」と題して講演。「商売もまちづくりも本気でやれば創意工夫が出る。強い覚悟が人との縁も運も生む」と熱く語り、ビジョンを定めて真剣勝負を挑むことの大切さを訴えた。
「ジンズ桶狭間の戦い」
ジンズの創業期に同業大手との不毛な競争で経営危機に直面し、ユニクロの柳井正会長から「ビジョンのない会社は成長できない」「商売は王道でなければならない」と諭された田中さんは2009年9月17日を「ジンズ桶狭間の戦い」と定め、失敗したら社長を辞める覚悟で改革に乗り出した経緯を説明した。
「毎日、ビクビクしていたが、この日は心が澄み切ったようだった。これが真剣勝負だと感じ、乗り越えたときに、商売のコツをつかみ、日本一になれると思った」と回想した。

▲事業、まちづくりを熱く語る田中さん
人材育成とまちづくり
地域貢献を思い立ったのは2011年、モナコで開かれた起業家の世界大会に日本代表として出場したのがきっかけ。「欧米の起業家は地域や社会への貢献にエネルギーを使う。かっこいいなと思った」と憧れ、起業家を発掘するために群馬イノベーションアワード(GIA)を始め、ビジネスを教える群馬イノベーションスクール(GIS)を開講した。
まちづくりに関心を持つようになったのもこのころから。ビジョンを明確にするため、糸井重里さんに初めて会った際、「あんたはバカだね」と言われたという。糸井さんの「バカ」は「本気になっている人のこと」であり、意気に感じた糸井さんが「めぶく。」を命名してくれ、前橋ブックフェスにも無償で協力してくれるようになった裏話を披露した。

▲田中さんに質問する小山市からの聴講者
「このまちはもう終わった」とショックを受けた中心街だったが、白井屋ホテルの再生、太陽の会による馬場川整備を通じて、劇的に回復の途上にある現状をうれしそうに語った。石破茂首相が国会答弁で前橋を取り上げ、衆議院予算委員会が視察に訪れたことを紹介、「『糸のまち』だったのが、『ITのまち』になる。eat(食)のまちにも、医都(医療都市)にもなれる恵まれたまち」と潜在能力を評価した。
最後に前橋の未来について、「人が芽吹き、自分がやりたいことができるまち、そういう人を応援できるまちにして、住む人、働く人、来る人がウェルビーイングを感じられるようにしたい」と強調、来場者の活躍を促した。

▲GIS11期生から花束を贈られる田中さん
講演会はGISの卒業生つくるGISアドバンスと上毛新聞社GIA事務局が主催。県外からも聴講者が訪れ、講演後は懇親会を開き交流した。

▲主催者を代表して挨拶するGISアドバンスの小林新一理事長