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完全試合 夢の続き
前高ナインがトークショー

2024.03.23

完全試合 夢の続き
前高ナインがトークショー

甲子園史上初の完全試合を達成した群馬県立前橋高校の野球部員のトークショーが3月23日、アクエル前橋で開かれ、完全試合や高校時代の思い出を語った。46年前の興奮が蘇り、感動を呼び起こすとともに、当時は話せない、話せなかった秘話が暴露され、120人が詰めかけた会場は終始、爆笑の渦に包まれた。

完全試合の定義知らなかった

大記録は第50回選抜高校野球大会が開かれた1978(昭和53)年3月30日、比叡山高校(滋賀県)との1回戦で生まれた。松本稔投手が投じた投球はわずか78球。試合は1-0だった。

トークショーは完全試合の模様を映像で流しながら打順により1番から登壇、ラジオパーソナリティー、青柳美保さんの進行で始まった。

▲青柳さん(写真右)の司会でスタート

切り込み隊長は主将を務めた川北茂樹さん。先頭打者でヒットを放って出塁し、「監督から『戦うんだ』『行け』と檄を飛ばされ、ストレートなら打とうと思った」と振り返った。その後の人生への影響については「頑張ることを信じることができた」と野球の神様に感謝した。

▲川北さん

2番はショートとして内野陣を牽引した堺晃彦さん。「たまたま前高に入り、たまたま野球部に入り、たまたま甲子園に行けた、たまたま人生でした」と笑わせた。「野次将軍だったのでは」と聞かれると、「いまでは許せないでしょう。格上のチームの戦意を削ぐために相手の監督まで野次り、審判に注意された」と苦笑いしていた。

▲堺さん

3番の相澤雄司さんは唯一の得点を記録、「1回戦を勝つことだけが目標だったのでうれしかった」と振り返った。前年の秋季大会前にキャッチャーからライトにコンバートされたことについて、「松本と息が合っていなかったという真相は50歳ごろに雑誌で知った。そうだったんだ」と笑わせた。

▲相澤さん

エースで4番の松本稔さんは現在、桐生高校の監督。他のナインが「MAEBASHI」のユニホーム姿の中、「KIRYU」のユニホームを着た。試合の4日前までは絶不調だったが、投げる際の肘の位置を下げたところ球が走るようになったと明かした。完全試合を意識したのは7回。「3、4人くらい達成しているだろうと思った」と振り返る。9回表2死、あと1人となった時、マウンドから空を見上げたことについては「最初から一度は上を見れば絵になるかなと考えていたのが最後になった」とひょうひょうと語った。

▲松本さん

5番の佐久間秀人さんは4回、無死1、2塁で貴重な先制打を放った。「バンドの構えをすれば内野手が前に出てくると思った。1度、校歌を歌いたかったのでうれしかった」と現役当時のまま真ん丸の笑顔を広げた。いまも還暦野球で現役を続けており、「見るのも好き。一生楽しみたい」と永遠の野球少年でいる。

唯一の新2年生ながら捕手を務め、松本投手の好投を引き出した6番、高野昇さんはインフルエンザのため急きょ欠席となった。

▲佐久間さん

7番の石井彰さんは一度も守備機会がなく、「途中から球は飛んでこないと思った。内野手は打球が来てエラーしたら大変だなと心配していた」と傍観していた。松本さんに続く2番手投手だったが、「誰もいなかったから。一度も公式戦に投げたことがない」と苦笑い。スポーツ新聞の現役記者をしており、「野球は素晴らしいスポーツです」とPRしていた。

▲石井さん

8番の茂木慎司さんも石井さんと同様に守備機会がなく、「ドラム缶でした」と笑わせた。その分、「声は大きいので校歌は一番大きな声で歌った」。高校時代の練習を振り返り、「前近代的で超昔ながらのうさぎ跳びや懸垂をさせられた。でも、結果的にそのおかげで甲子園に行けた」と感謝した。

▲茂木さん

完全試合の影の主役となったのは9番、セカンドの田口淳彦さん。7つの守備機会を完璧にこなした。記者会見では「恥ずかしかったから完全試合は7回から知っていたと答えたが、本当は知らなかった」と自ら暴露。「2回戦ではエラーが2個だったが、本当は6個。松本には迷惑かけた」と謝罪すると、「本当だよ」と後方から松本さんが声を掛けた。

▲田口さん

完全試合の瞬間、全員で見届け

9回表、比叡山高の最後の攻撃が始まるとトークショーを中断、大記録誕生の瞬間を見届けた。田中不二夫監督が勝利の瞬間、ベンチで男泣きすると、会場から大きな拍手が起こった。

ライバル校として一緒にセンバツ甲子園に出場した桐生高校のエース、木暮洋さん、主砲の阿久沢毅さん、セカンドの柴田敦さんも特別ゲストで出演した。

▲9回表を見守る観客

▲写真左から柴田さん、阿久沢さん、木暮さん

『昭和高校球児物語』を出版

トークショーは主将の川北さんが高校入学から卒業までを回顧した『昭和高校球児物語-前高 完全試合のキセキ』を発刊したのを記念して、前橋高の同期でつくる前高54会が主催した。

トークショーに先立って、川北さんは「物語の主人公は野球という素晴らしいスポーツと高校生活。私を育んでくれたこの二つに対するリスペクトを遺言として残した」と挨拶した。

▲著書を持つ川北さん

特別ゲストとして登壇したライバル校、桐生高校のエースだった木暮洋さんは「昭和の野球は問題もあるが、いいものもある。若い世代のバイブルになればいいなと思います」と激励した。

▲エールを送る木暮さん