interview
聞きたい
【聞きたい角田さん1▶︎】
外見は自分だけのものではない 人との関係性も変える
2021.12.03
多発型脱毛症で髪の毛を失ったことから、ヘッドスカーフを開発した角田真住さん。さまざまな色や柄を取り揃え、髪が無くてもおしゃれを楽しめる提案をする。群馬県産シルクを素材に、自ら工業用ミシンを使い、一品一品手づくり。それにより、少量多種の生産が可能に。現在はネット販売がメインだが、2022年春には前橋のまちなかに実店舗「LINOLEA(リノレア)」を構える。
―36歳のとき、突然、多発型脱毛症を発症。その衝撃は大きかったのでは。
「半年で2/3の髪の毛が抜けました。まるで落ち武者のような様相です。鏡を見るのも嫌で、出かけるのが億劫になる生活が続きました。ウィッグを使っていましたが、子どもに引っ張られたり、頭痛がしたり。
同居していた母は、私以上に悲しんでいました。その姿を見るのも辛かった。髪がないだけで、なぜこんなに女性は生きにくいのか。そして外見は自分だけのものではなく、人との関係性を大きく変えるものだと感じました」
―病気がヘッドスカーフ開発へとつながったのですね。
「はい。ある日、どうしても出かけなければいけない用があり、手持ちのスカーフを頭に巻いて、外出しました。そうしたら、周りの方々が『素敵、おしゃれね』と褒めてくださった。いままで私のそばでは、髪の話はしないようにと気を使っていた方々が笑顔で話しかけてくるのです。嬉しかったですね。
これは商品になるかもしれない、私と同じ思いで苦しんでいる人の助けになれるかもしれないと思いました」
―群馬イノベーションスクール(GIS)に入学した理由は?
「独身時代は水産会社で、秘書の仕事をしていました。でも結婚し、出産してからは専業主婦。ビジネスの勘を取り戻したかった。そして、ヘッドスカーフを売れる商品として一からプランニングするためのノウハウを学びたいと思い、2015年、GISの第2期生となりました」
―まず取り組んだことはなんですか。
「ヘッドスカーフの型づくりです。鏡がなくても、着脱できるスタイルをつくりたかった。通常のスカーフはツルツルしているため、巻いたり結んだりするのは案外難しいのです。
自宅で、模造紙を頭に巻き、いろいろな形にカット。試行錯誤の日々が続きました。その結果、布を特殊な半円形に切り、入口部分にシャーリングを施し、後ろをシュシュで結ぶ、今のスタイルが見つかりました。これなら、帽子のようにスポッとかぶることができます」
―素材は群馬県産のシルクを使っていますね。
「GISの先輩から『肌に触れる裏地は、優しい布地がいい。群馬のシルクが向いているよ』と助言をいただいたのがきっかけです。翌日、安中市の『碓氷製糸』へアポを取り、協力いただくことに。
裏地はシルクですが、表地は耐久性の高いポリエステルを採用しました。2つの素材を合わせて縫製するには高い技術が必要なため、織物の街・桐生市の企業にお願いしました。
こうして、試作品が完成。2015年、群馬イノベーションアワードに参加したところ、ファイナリストまで残り、入賞することができました」
つのだ・ますみ
1977年10月、伊勢崎市生まれ。前橋女子高-東京水産大学卒。県内の水産会社勤務を経て、2015年、「群馬イノベーションアワード」ファイナリスト。2016年、ヘッドスカーフの「アルモニア」創業。