interview

聞きたい

最後のGBGB 
香川誠さんに聞くVol.2

2023.06.07

最後のGBGB 
香川誠さんに聞くVol.2

路線の違いから大喧嘩して解散した「ROGUE」。20年経ち再結成の話が持ち上がった時、奥野さんを悲劇が襲います。事故により、首から下が不随になり、力強かった声を失います。でも、不屈のバンド「ROGUE」は蘇りました。復活の舞台となったのがGBGB。2013年に始まり10年。いよいよファイナルを迎えます。(昨年5月と今年5月に単独インタビューした内容を再編集しました)

再結成、「ありがとう」と言われて

―1990年に解散し、復活したのが2013年。23年間もの空白がありました。

20年くらい経ったら、何でけんかしたのか忘れてしまった。音楽プロデューサーをしていて、後輩と飲んでいるとき、「ROGUEのライブの後の打ち上げは最高に楽しかった」と言われ、じゃあ、打ち上げやるか。それにはライブやらないとな、という話になって、奥野に「1回でいいからまたやらない」って電話した。「1年後目指してやろう」「また連絡するね」なんてやりとりがあった。

そんな話をした2週間後。事故が起きた。見舞いに行ったら、頭を固定され、ベッドに横たわっていた。嫌いなヤツが弱っているのを見るのはつらくて。嫌いと言えなくなって…。

―事故は2008年。奥野さんは首から下が不随になったが、懸命なリハビリで歌えるように。

地元の後輩たちから「奥野さんのために何かしたい」と相談を持ち掛けられた。何をすればいいか。奥野に聞いたら、「障害者が外に出る足がない」と言うんで、ライブをやってその収益で福祉車両を買おうということになった。GBGBの始まりです。

後輩に全員集合をかけた。返事に「ノー」はない。 「イエス」だけ(笑)。でも、あいつらのおかげでできた。俺の自慢であり、誇りです。

再結成が決まったとき、奥野から「ありがとう」と言われた。びっくりしたね。あいつ、ありがとうって言葉知っていたんだと初めて知った。

©Shinya Kigure

今の奥野の方が声も歌も好き

―23年ぶりの舞台、どうでしたか。

あっという間。7曲しかできなかったから。でも、感動的ではあった。奥野は泣くし。お客さんも泣くし。じゃあ、俺は泣かないと決めた。いまも泣いていません。

何千人もが奥野を待っていたんだ。こいつは歌い続ける人間なんだなと改めて思い知らせれた。泣くほど待っていたのか。もっと早く言ってよ(笑)。

奥野の声は昔とはあきらかに違う。力強さは失せた。でも、いまの奥野の方が声も歌い方も僕は好きですよ。

GBGBの精神は永遠に

―コロナで3年中止となり、4年ぶりのGBGB。継続を願うファンが大勢いますが、「ファイナル」ですか?

本当に最後。いろいろ言ってくれる人はいるけど、気は変わらない。3年できなかったが、その間に歳は取った。もうすぐ還暦ですよ。GBGBを始めたのが2013年。10年経ったのでちょうどいいでしょう。

俺たちの肉体的な理由もあるし、舞台裏で頑張ってくれる後輩たちの事情もある。みんなよくやってくれたね。感謝しています。ライブとしてのGBGBは終わるけど、できれば運動会でも芋煮会でもいいからGBGBの名前と精神を残してほしいね。

―ボーカル、奥野敦士さんが車いす生活となったのをきっかけに、ROGUEの23年ぶりの再結成に合わせて始まりました。

奥野が「障がいのある人が外出する足がない」と言うので、じゃあ、収益で福祉車両を買おうかと。ただの音楽フェスとは違う。8台寄贈できました。喜ばれたから少しは役に立てたかな。最後に来てくれた人たちに俺たちがGBGBに込めた思いが伝わればうれしいね。

俺たちに続け 群馬発バンド

―多くの著名なアーティストが協力しました。

布袋寅泰、ミスチル、森友嵐士…。本当にすごいアーティストが来てくれた。「力を貸してくれ」と声をかけ、趣旨に賛同して喜んで来てくれた。その気持ちがうれしいね。

―ファイナルにはいまが旬の群馬の後輩バンドが応援してくれます。

「G-FREAK FACTORY」が一回り下で、「FOMARE」がそのまた一回り下くらい。一番最初に声をかけ、即答で「イエス」。もちろん、「ノー」とは言わせないけどね(笑)。

G-FREAKの作品は恐ろしいほどメッセージ色が強い。ROGUEはメッセージがない(笑)。熱いメッセージが感じられるね。

FOMAREはかわいいんだ。「飲みに行くぞ」と誘うと嫌がらず付いてくる。若いやつらには絶対負けないぞと張り合って飲むけど、最近は眠くなるのが早くて。

俺たちの“遺志”を継いで、群馬のロック界を盛り上げていってほしいね。

 

©Shinya Kigure

最後のGBGB 泣かないだろうな

―ほかにも豪華な顔ぶれがそろいました。

みんなすごいけど、一番思い入れがあるのは吉川(晃司)かな。実は吉川のデビュー映画に俺たち出ているんだ。吉川がボーカルを務めるバンド役。吉川は劇中でROGUEの『クレイジー・レディ』を歌ったけど、「これじゃない」とか捨て台詞を吐いて、『モニカ』でデビューするっていう流れ。

これまでも何度かオファーしたけど、ドラマや舞台で半年くらい拘束されて出られなかった。ファイナルには「何があっても必ず出る」と言ってくれた。一番、男気があるね。

―ROGUEは2日とも出演します。何曲歌いますか?

まだ、決めていない。曲目も。まあ、いつも、決まるのはぎりぎりになる。『LIKE A MOON』と『終わりのない歌』はやらないとお客さんに怒られるだろうね。

―香川さんはいつもクールですが、今回も涙は見せませんか?

さあ、どうだろう。泣かないだろうな。最初のとき、奥野は泣くし、お客さんも泣いた。じゃあ、俺は泣かないと決めた。でも、本当はドラマを見ても泣いちゃうくらいなんだけど。奥野はどうかな。

―GBGB後、ROGUEはどんな活動をしますか。まさか、解散はしませんよね。

みんな、体にどこかガタがきている。福祉施設に入っている奥野が一番健康だったりして。

全員が健康なら続く。誰かが欠けたら終わり。サポートは入れません。俺たちは4人でROGUEだから。お金をいただいて演奏するのだから、納得のいく演奏ができなくなれば引き際でしょう。

FINAL GBGB

・期日 6月10(土)、11(日)

・時間 開場10時、開演11時30分

・会場 グリーンドーム前橋

・料金 単日9800円、通し18000円

・販売 チケットぴあ、イープラス、ローソン

・主催 LLP信誠会(http://gbgb.jp/contact/

ROGUE(ローグ)

1982年結成。前橋市出身の奥野敦士(ボーカル)、香川誠(ギター)、深澤靖明(ドラム)に85年、西山史晃(ベース)が加わり、メジャーデビューする。89年、日本武道館で単独ライブを開き、90年に解散。2013年、23年ぶりに再結成する。