interview
聞きたい
【聞きたい小野里寧晃さん▶1】
ECサイトにカリスマ店員
2023.05.08
顔中にピアスしてサンダル履きで会社の面接を受けた。300社が門前払い。運よく入った会社で必死に働き頭角を現した。満を持して独立。数億円の借金を背負ったが、逃げなかった。「挑戦するバカ」は「常識をぶっ壊す」やり方で成り上がった。バニッシュ・スタンダードの小野里寧晃CEOに聞く。
オンラインで接客、利益還元
―「販売員をカリスマ販売員に変える」とアパレル業界を中心に話題を集めている「スタッフスタート」。どのようなサービスでしょう。
店舗スタッフのオンライン接客アプリです。
アパレルブランドで最も導入の多い「コーディネート投稿」機能を例に挙げると、スタッフがお薦めの服をコーディネートして自分で着てみる。それを写真や動画にしてレビューとともにECサイトに投稿します。
投稿に紐づいた商品が売れれば、スタッフにも利益が還元されます。いっぱい売れれば給与が増える。モチベーションが上がって、さらに一生懸命売るようになる。カリスマが誕生するわけですよ。
―スタッフにはどのくらい還元されるのですか。
利用される企業には「スタッフさんにインセンティブを与えてくださいね」とお願いしています。金額は口外できませんが、最大で売り上げの10%を付与している企業もあります。一番成績のいいスタッフは月額1億3000万円販売しているんですよ。
―それはすごい。確かに、やる気になりますし、店舗にとってもいい話です。
いまの世の中、オンライン上にたくさんお客さんがあふれている。そのお客さんをオフライン、つまり店舗に来るように仕向けようとする経営者が多いけど、それはナンセンスだ。ECサイトでいいじゃん。めちゃくちゃ便利だもの。
お客を動かすのではなく、評価をオムニチャネル化すればいいこと。
〇〇会社前橋店の店舗の売り上げと前橋店のスタッフ、小野里がECサイトで売ったのを前橋店の総売り上げと考えればいいわけですよ。小野里の評価にもなり、給与が増える。そりゃ、頑張りますよ。
ギャル男の発想 1500億円産む
―このサービスを思いついたきっかけは?
渋谷で日焼けサロンの店員をしていたことがあって…。
―えっ、日焼けサロン?
はい、ちなみに僕、全日本パラパラ選手権に出ていました。ギャル男でした(笑)。
ファッションが好きで、アパレルの店員さんにいっぱい友達がいた。彼らは店舗で月に500万円も1000万円も売り上げるのに給料はずっと20万円のまま。それはないだろうと。
そんな彼らを救いたいという気持ちでアパレルECの受託開発をしていたのに、ある日、友達に「お前たちがやっているECなんて大嫌いだ」と言われました。
現場のスタッフにとってECは救世主ではなく、お客さまを奪うものだと知り、それならスタッフが報われるECの仕組みを考えてできたのがスタッフスタートです。
―サービスはいつから始めましたか。
2013年に構想し、3年後の2016年からアプリを提供しています。
最初は営業に行っても門前払いでした。でも、サービスには自信があったから、ただ同然でもいいから使ってくれと頼みました。
で、使ったら売り上げが伸びた。次第に次から次へと注文が来るようになりました。
―現在の利用状況はどうでしょう。
2022年は2100以上のブランドと契約しています。登録しているスタッフは18万人。スタッフスタートで作成された投稿の流通経由売上高は1500億円に達しました。
アパレルだけでなく、コスメもやっているし、家電も、家具も。対象は広がっています。
おのざと・やすあき 1982年、前橋市生まれ。前橋三中-佐野日大高-日大。大手Web制作会社で主にアパレル企業のECサイトを制作。2011年にバニッシュ・スタンダードを設立、店舗スタッフをDX化させる「スタッフスタート」で業績を伸ばす。
【聞きたい小野里寧晃さん▶2】 他人の3倍仕事 28歳で起業(N)
「店舗スタッフがECサイトで接客する」「売り上げの一部を還元」「モチベーションが上がり一生懸命売る」-。スタッフサービス…