interview

聞きたい

【聞きたい宮田裕章さん4▶︎】
食は「観光の一丁目一番地」

2023.02.09

【聞きたい宮田裕章さん4▶︎】
食は「観光の一丁目一番地」

めぶくIDを使って生まれる笑顔を増やすため、宮田裕章さんはBOOK FESに続いて、アートや音楽をコンテンツに挙げます。だれかれ構わず呼び込むのではなく、「前橋の人が大事にしているものを一緒に大事にしてくれる人」に照準を当てるようアドバイスします。

魅力あるマイナンバーに

―「だれも取り残さない」といわれますが、スマホを持たない、使わないデジタル弱者をどう巻き込んでいきますか。

国がやるべきだったのは、マイナンバーを交付しなくても、裏でつながっていればよかった。デジタルを使えなくても裏でつながっていて、行政の窓口でサポート支援すればいい。

リテラシーとか、意欲が少ない人をどう取り残さないか。一番足りなかったのがマイナンバーに魅力がなかったということ。マイナンバーを使ってできること、ほとんどだれも挙げられない。納税がちょっと楽になったくらいでしょうか。

コロナのワクチン接種に利用できればよかったですね。いよいよ保険証と紐づけられるようになったが、作るのが目的ではなく、いかに使えるかが肝心です。

日本観光は地方の時代に

―めぶくIDを使い「笑顔」を増やすために、どんな企画が考えられますか。

BOOK FESみたいなコミュニティーが多様に生まれれば楽しいですね。本が好きな人がいれば、アートが好きな人もいるし、音楽が好きな人もいる。

それと、食べること。食に関して日本人ほど関心の高い民族はいないでしょう。日本の観光価値は世界で1、2を争うほどです。食の魅力を高めるのは観光の一丁目一番地でした。

日本観光といえばかつては「富士山、芸者、寿司、天ぷら」というのがお決まりでした。東京から京都、大阪というゴールデンルートがあった。

でも、コロナ禍の前から地方都市の割合が高くなりました。海外の人が地方の魅力を発掘してくれる。東京でも知られていなかった所がミシュランによって観光地になっています。2つあります。どこだか、分かりますか。

―高尾山でしょうか。

そう、高尾山。ミシュランで3つ星を獲得すると、この十何年間で世界で一番登山客が多い山になった。年間300万人とか。なぜかというと、富士山は見えるし、自然も美しい。それに山岳信仰に接することができる。何て素晴らしいんだと、日本人も気付いたのですよ。もう一つは?

―浅草ではないし、渋谷や新宿でもないでしょう。

上野です。御徒町にかけてのカオス、あの訳が分からない場所は世界中どこにもない。

同じように地方都市もいいところを発掘している。アートで知られる直島(香川県)は海外のセレブの評価が高い。キアヌ・リーヴスが来る、ヴィトンのデザイナーがアートのためだけに滞在する。そんな場所になっています。

みんなを呼び込み、消費させる観光より、ハイコンテクストとの多層的なコミュニティーを作り、その街の未来と相性のいい人が来る観光が求められる。

その方が観光公害にならない。日本はしばらくすると、オーバーツーリズムになる。バルセロナがそうで何でもないホテルが1泊3万円だったりして、海外の人はがっかりするし、街の人も疲弊していく。パリも同じようになっています。

そうならないように、先を見据えて、前橋の人が大事にしているものを一緒に大事にしてくれる人を呼び込むのがいいでしょう。

みやた・ひろあき

1978年生まれ。東京大大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻修士課程修了。保健学博士。専門はデータサイエンス、科学方法論。慶應義塾大医学部医療政策・管理学教室教授。2025年の日本国際博覧会(万博)テーマ事業プロデューサーを務める。