interview
聞きたい
【聞きたい糸井さん1】
前橋は諦めない、だから「めぶく。」のです
2021.07.19
「ほぼ日」社長が最終形態?
コピーライターという職業を世に知らしめ、数々の名コピーを生み出した。エッセイを書き、タレントとしての地位も築く。かと思えば作詞を手掛け、ヒットメーカーとなった。ゲームソフトは自ら進んで作り上げた。「言葉」を大事に紡ぎながら、変身を繰り返す糸井重里さん。ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」社長は果たして最終形態か。
あきらめていないというのが前橋にはある
白井屋ホテル99人が反対したかもしれない
―前橋市のビジョンを「めぶく。」と命名しました。言葉に込めた思いを聞かせてください。
もともとはドイツのコンサルタントのレポート、前橋はどういう場所でどうあるべきかをまとめたものをなるべく短い言葉でみんなが分かりやすく表現しただけなんです。メッセージというよりは翻訳ですね。
日本中の地方都市みんなそうなんですけど、高度成長の時、同じように成長してきました。強い個性があるわけじゃないから、頑張れば伸び代があるよっていう街ばかりでした。
ただ、(前橋には)住んでいたことがあるので、水が豊かなのは確かだと。水系みたいなものは感じてほしいと思いました。「めぶく」っていうのは植物から想像するもので、土と水さえあれば育つ。その意味で土の水もある。そのことを感じられるといいなと思い、日本語を探しました。
-最近の「めぶく。」情報は入っているのでしょうか。
時々、(ジンズの)田中仁さんとやり取りしています。よく、掘り起こしているのは分かります。
何よりもあきらめていない。あきらめていないのはいいですよね。あきらめていないというのが前橋にはある。大どんでん返しを狙ってるのではなく、ここをうまくすればいいとか、できることを一つ一つやっている。田中さんの実業家の勘なのでしょうが、やれることを探しているのはいいなと思います。
―昨年12月にオープンした白井屋ホテルは中心街のランドマークになっています。
頭のいい人100人で会議したら止めたでしょう。99人反対かもしれない。ただ、51%勝つ可能性があれば、頑張れば、あきらめなければ勝つ可能性がある。行政だけだったら、厳しかったかもしれないですね。やる人がいたってこと、それだけで面白い。
300年の歴史を紡いだホテル
【白井屋ホテル】原点は江戸期に創業した旧宮内庁御用達の旅館。森鴎外、乃木希典ら著名人に愛されてきたが、中心街の衰退を受けて2008年に廃業した。取り壊しの危機を救ったのが田中仁財団。藤本壮介氏ら国内外のクリエーターが参加、昨年12月、6年の歳月をかけて改装、新築された。
糸井重里(いとい・しげさと)1948年11月、前橋市生まれ。
前橋高-法政大文学部中退。コピーライターとして人気を集めたのを皮切りに、幅広く活躍するマルチクリエーター。沢田研二の「TOKIO」をはじめ作詞も数多く手がけ、企画制作したゲーム「MOTHER」シリーズは熱狂的な人気を集める。1998年にスタートしたウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」では、「ほぼ日手帳」をはじめ2021年の日本文具大賞グランプリを受賞したAR地球儀『ほぼ日のアースボール』、先月開校した「人に会おう、話を聞こう。」をテーマにアプリを通して届ける『ほぼ日の學校』など様々な商品開発、企画を手掛ける。
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